人の石像
二人の書生が都へ官吏登用試験を受けに行った。途中に蓮池があり、池のほとりに牛の石像、馬の石像、それに人の石像が立っていた。
この池の砂浜に二人が休んで景色を眺めていると、風が吹き、ゴロゴロと雷が鳴り出し大粒の雨が降り出した。まさに『雷鳴轟き、雨落つ』の句にピタリである。
二人はこの情景に心を動かし、一人が『風吹き、蓮の葉千枚の響き』と上の句を詠むと、もう一人が『雨滴、砂浜に万点の穴を穿つ』と下の句をつけた。二人は互いにその句を褒め合って得意になっていると、後ろから「お二人さん、その聯句少しおかしくないか」と声がする、振り返って見たが誰もいない、もう一度あたりを見回しても人影はない。
もしかして後ろの人の石像が話したのではと、「今、話したのはあなたですか、私たちの句の何処がおかしいのです?」と人の石像に聞くと石像は「何処が変?、『風吹き、蓮の葉千枚の響き』と言うが、お前さんは数えたのかね、本当に千枚あったのか、九百九十九枚かもしれないし、千一枚かもしれない。『雨滴、砂浜に万点の穴を穿つ』と言うが、お前さんも数えたわけではないだろう、勝手な数を言うからおかしいのだ」と言った。
二人の書生は石像の言葉に不服で「それではどうすればよい句になりますか」と聞き返した。「そんなに難しくない、『風吹き、蓮の葉重なり響き、雨滴、点点と砂浜を穿つ』はどうかな、風が吹いて蓮の葉が重なりあって響き、雨が落ちて砂浜にいくつのも穴をあけていく情景だ」これを聞くと二人の書生はまいってしまい、思わず「大先生、あなたはどうして都へ行って官吏登用試験を受けないのですか」と尋ねた。
すると人の石像は「わしは受かるのだが受けないのだ」と答えた。二人の書生は顔を赤くして「私たちは受からないないのに受けるのか」と言った。
李占春故事選 1992・11・23 2001・06・16校正