生き返り草

 大昔、愛尼山に年老いた猟師が住んでいた、妻はすでに亡く、七人の息子と猟をして暮らしていた。

 ある日、老猟師は大雨に遭い、ずぶ濡れになって家へ帰ると床についてしまった。食べ物も水もとらず、息も絶え絶えになり、もう自分は駄目だと悟り、老大から老七までの七人の息子を枕もとに呼び「息子たちよ、遠い遠い東の三角山の洞窟に金色に輝く生き返り草があるということじゃ、わしが死んだら、お前たちはわしを背負ってその山へ行き、洞窟の中の生き返り草を探し、わしの頭に置いてくれ、するとわしはまた生き返るのじゃ」と言うと息絶えた。
 老父が死ぬと七人の息子たちは言いつけられた通り、老父の死骸を担ぎ太陽の昇る東に向かい、三角山を探し求めて出発した。無数の山を越え、無数の河を渡っているうちに、老父の死骸は腐ってきたが、息子たちはそれでも見えない三角山を目指した。だが六人の兄たちはついに生き返り草を探すのはやめて死臭のする老父の死骸を谷間に埋めてしまおうと言いだした。
 一番末の老七は兄たちの言うことを聞かず、勇を奮い一人で老父の死骸を担いで更に三つの山を越え、三つの河を渡りとうとう三角山に辿り着いた。老七は老父の死骸を下ろすと、急いで生き返り草のある洞窟を探した、山を攀じ登りついに四方に金色の光を放つ洞窟を発見した。洞窟の前では一頭の虎と一頭のノロが闘い、虎に首を噛みつかれたノロは四方に光を放つ洞窟の中へ転がっていった、と同時に虎は老七を見つけ、まだ血のしたたる大きな口を開けて飛びかかって来た、老七は恐れずに刀を抜き身を翻すと“サッ”と虎の腰を何回も切りつけ、虎の体を幾つにも切ってしまった。

 老七が身を屈めて洞窟に入ると、虎に首を噛まれて死んだノロが金色に輝く生き返り草をくわえて生き返り、洞窟から空へ飛んで行った。老七も二本の生き返り草を抜き、草の葉を一枚口に含んだ、すると不思議なことに体は燕のように軽くなり、洞窟から飛び出した、老七は光る生き返り草を持って老父を生き返させようと戻ると、老父の死骸は姿、形もない、これはノロがくわえた生き返り草がちょうど、老父の死骸の口に落ち、老父は生き返り、生き返り草を口に含んだまま何処かへ飛んで行ってしまったのだ。老七はしかたなく二本の生き返り草を持って家へ帰った。
 やがて小さな河辺に来ると河の中に一匹の犬の死体が流れて来た、老七は死んだ犬を河岸に引上げ、一枚の生き返り草の葉を死んだ犬の頭に置くと、しばらくすると死んだ犬は体をふるって立ち上がった。こうして老七は家へ帰る途中でたくさんの家畜や鶏、貧乏な人々を生き返らせた。

 ある日、老七は愛尼山の麓の村へ来ると、何か騒がしく、村の中から悲しみの泣き声が伝わってくる、老七は一人の老人に「村に何か起きたのですか、何か騒がしく泣き声もしますが」と聞いた、老人は溜め息をついて「長者の家の花のような美しい娘が死んで、長者は嘆き悲しみ娘を墓に埋めないと言い張っているのです」と答えた。老七はそれを聞くと急いで村に入り、長者の家に行くと「わたしに娘さんを見せてください、わたしに娘さんを生き返らせる方法があります」と言った、長者はそれを聞くと喜び「わたしの娘は死んで二日たちました、もしあなたが娘を生き返してくれれば、娘をあなたの妻にします」と言った、長者は集まった人々の間をわけ、老七を家の中へ案内すると死んだ娘を見せた、横たわっている娘は死んで二日たっているのに、面影は美しくまるで白い花びらのようであった。
 老七はすぐ懐の生き返り草を出すと娘の顔の上へ置いた、しばらくすると娘は “ス−ス−”と息を始め、静かに二つの目を開けた。長者は老七が本当に娘を救って生き返らせたのを見ると、心の飛び立つほど喜び、娘の体が元に戻ると吉日を選んで娘を老七に嫁がせた。

 老七は結婚して間もなく愛する妻を連れて自分の家へ帰った、家には六人の兄の姿はなかった、老七は父と兄たちを失った悲しみのあまり、だんだんと痩せ衰え病になった、妻は生き返り草が死人を救うのだから、病気も治すだろうと、こっそりと生き返り草を臼で粉にして鶏を煮た汁にまぜて老七に飲ませた、老七が生き返り草の入った汁を飲むと、体がだんだん小さくなり空に舞い上がり太陽の中へ入って光となった、妻は老七を慕い、残った生き返り草の粉を飲んだ、するとやはり体が小さくなり天に舞い、月の中に入って光となった、それから太陽も月も年をとらなくなった。そして太陽が沈むと月が昇り、太陽を追いかけるのは月に入った老七の妻が太陽に入った老七を追つているのだ。  

             西双版納哈尼族民間故事集成                1998.7.23

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