滝の魔女

 昔、南散村に標門という猟師がいた。幼い時から猟が好きで、何時も食事に獣の干肉を欠くことはなかった。   

 村から二十里あまり離れた所に南破河が流れ、河上には美しい滝があったが、滝のそばに魔女が住んでいて滝を独占し人や家畜を襲っていた。
 それで滝の周囲十里四方を開墾する人もなく、山に入って猟をする人もなかった。滝の下には温泉も出て毎晩いろいろな動物の群れが水を飲みに来るのだが、人々は魔女を恐れて誰も温泉の周りで猟をする者もなかったのである。だが標門は温泉に獣が多く出入りするので、何時かそこで猟を試してみようと思っていた。

 ある晩、標門は火縄銃を持って温泉の辺りに行き、身を隠す場所を探してしゃがみ、周りの様子を見ながら、弾や火縄、火打石を確かめ、樹の枝に銃をのせ、じっと獲物を待っていた、すると近くから長く尾を引くような女の声で「標門、標門、お前の家に病人がでて早く帰ってと言っているよ」と声がする、標門はエッと驚き、フ−ッと息をつくと慌てて銃をしまい急いで家へ帰った。標門は歩きながら、今日家を出る時、何処で猟をするか誰にも言ってないのに、どうしてあの声の主は俺のいる場所を知っていたのだろうか、おかしい変だと知らず知らずに急ぎ足になっていた。標門は汗びっしょりになって帰ると、家で病気になった者はいない、家族はみんな標門が帰ったらご飯を食べようと待っていた。標門はやっと魔女の仕業だと気がつき、何時かこの魔女と手合わせしてやろうと心に決めていた。

 翌日、標門はいつもの馴れた場所へ行き、目の前の小道をじっと見つめ獲物が来るのを待った。すると昨夜と同じ声が聞こえてきた「おい、お前のおっかさんが死んだのにお前まだ帰らないのかい、猟に夢中になっておっかさんが死んでもかまわないのかい」これを聞いた標門はびっくりして手足がふるえ、銃をしまうと涙を流しながら飛ぶようにして家へ帰った、胸をドキドキさせてやっと家へ着くと、家の中は何も変わった様子もない、一瞬ボ−として、「おっかさんはどうした」と聞いた、すると子供たちが声を揃えて「叔父さんの家へ胡麻をとりに行ったよ」と答えた。その時、標門の母親が門を入って来たところだった。標門は続けて二回も騙され非常にくやしがった。

 何日かして標門はまた銃を担いで温泉の辺りに猟に出かけた。そして恰好の場所に身を隠していると、後ろからまたあの声が聞こえてきた。「お前はどうして、何時もあたしの縄張りを荒らすんだい、あたしゃ、落ち着いていられないよ、お前のおかみさんが人にさらわれたのに、お前まだ家へ帰らないのかい」 標門はまた魔女が騙しているなと、慌てずに銃を出し、女房のもんぺの裾の上を切った布で銃身を隠し、臭いガオシトンの葉を口に入れてよく噛んで含み、雄牛十頭分の力を奮い起こし、猛然と声の方へ走った。
 ヤッ、目の前に魔女が立っている、柱のように高く、穀物入れの籠のように太って、洗面器のように大きい緑の目で睨み、水桶のような二つの鼻の穴から臭い息を吐き出し、二つの麻袋のような乳房は膝まで垂れ下がり、白い髪の毛は長く地面にとどいている。
 だが標門は少しも恐れず、“ペッ”と口の中の臭いガオシトンの葉を魔女に吐きつけ、その凄い匂いに目のくらんだ魔女の腹めがけて銃を一発放って魔女を打ち倒した、標門はすぐさまタンジシイ の長い刀を抜き、魔女の額を何回も切りつけた、魔女は地面に転がり「今日、お前はあたし討ち、あたしの縄張りを奪ったが、今に見てみろ、仲間があたしの仇を討つからな」と言って息絶えた。

 魔女が死んでから、村の猟師たちは標門と一緒に温泉の周りで猟をするようになり、猟の度にノロや猪を捕った、それで村人は男も女も老人も子供もみんな美味しい獣の肉を食べられるようになった。  

             西双版納哈尼族民間故事集成                1998.7.18

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