ランガンと魔神

 むかし、愛尼山の麓に頭は小さく色は黒い、痩せこけたまるで枯れた柴のようなみなし子がいた、むろん名前もない、金持ち連中はこの子を@ランガン(醜い子)と呼びすてていた。ランガンは荒れ地を耕す力がないから、何処から見つけてきたのかわからないような破れた網で村のはずれに流れる河で魚や海老を捕り、貧乏な辛い日々を送っていた。それで人々はみんなランガンの能無しと見向きもしなかった。

 ある日、ランガンはまた河で魚を捕っていたが、この日はたいして苦労もせず、魚、海老それに蟹まで網一杯に捕れ、力をだしても引上げられない、ランガンは喜んであっちを引きこっちを引き、母親の乳を飲んだあとに出るような力をいれて(必死になって)やっと獲物一杯の網を岸までひきずり上げ、家へ帰る支度をしていると、小さなでもはっきりと「子ども、こわがらなくていいぞ、わしはこの河の主だ、わしはみなし子のお前が可哀相で、今日はたくさんの魚や海老を捕らしてやった、これからは何時もここで魚を捕れ、わしがその度に一杯捕らしてやる。そうだ、今度来る時に何時もお前を苛める奴を連れて来い、わしが仇を討ってやる」と言う声が聞こえた。

 ランガンは驚いたり喜んだりして、あたりを見たが誰もいない、ランガンは目に涙をため「あなたは誰、あなたの声は死んだおっかさんの声にとてもよく似ています、どうぞわたしにあなたの姿を見せて下さい」と言った、するとまた「わしはこの河の主だと言っただろう、わしは世間で言う魔神だ、わしを見れば恐ろしくなるぞ、だがあの横暴な極悪非道な奴らの前に現れて、あいつらを威しつけてやる、わしの言う通りにあいつらを連れて来い、さあ帰れ」と声がした。
 ランガンは貧乏だが心は優しい、家へ帰ると隣近所の貧しい家に捕って来た魚を分けてやり、翌日からまたランガン一人で魚を捕りに行った、ランガンは人が魔神にやられるのを見たくはなかったのだ。魔神はランガンの優しい心を知り、ランガンが言う通りにしなくても怒らずに毎日一杯魚を捕らせた。こうしてランガンはだんだん魚捕りの名人だと近隣の評判になり、愛尼山の麓の村々に伝わった。

 ある日の朝、村の大金持ちが貪欲なほかの金持ち連中を連れてガンランの家へ来ると、「やい、ランガン、お前は毎日俺の河へ行って魚を捕っているそうだな、お前自分の罪を知っているのか、弁償しろ、しなければ命を貰う」と言った、ランガンは「河は天が下の地上を流れているのです、わたしは何処があなたの河かわかりません」と答えた。
 すると、大金持ちは「わしがお前に教えてやる、この村の河、一本の木、一片の地もみんな俺のものだ」言った。それを聞いた人のいいランガンもさすがに怒り、あの魔神の言葉を思い出して、一つの計りごとを考え「いいですよ、これからはあなたの河で二度と魚は捕りません、何を弁償しましょうか、あなたたちには金はあるし、食べ物もあるお人たちだ、魚、海老など、お口にあった物にしましょう。わたしと一緒に来れば、ただでわたしがそれを捕ってあげます」と言った、大金持ちが「わしらは大勢だぞ、わしらみんなが食べられるほどお前捕れるのか」と聞いた、ランガンは笑って「わたしは魚捕りの名人ですよ、河に行けば、あなたたちみんなが食べられるくらいすぐ捕れますよ」と答えた、金持ちたちは喜んでぞろぞろとランガンについて河へ行った。

 すると突然、大風が吹いてランガンを山の頂上へ巻き上げ、金持ちたちが驚いていると後ろから山を流し海をひっくり返したような大洪水が押しよせ、金持ち連中を押し流してしまった。
 こうして村には貪欲な金持ちたちがいなくなり、ランガンはもとのように河で魚や海老を捕り、平穏に暮らすことができた。  

 @ランガン・然剛・ 愛尼語、指相貌極丑的人(顔が醜い人を指す)  

           西双版納哈尼族民間故事集成                  1998.7.16

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