不思議なまだら蛇
昔むかし、曼庄宰村に阿才という男がいた。阿才の両親は早く死んで阿才には兄弟もない。それで30歳を過ぎてもまだ結婚もできできない独り暮らしである。それでも雌鶏を飼っているのは雌鶏の生む卵が油や塩と交換できるからであった。
ところが二年たつと雌鶏は卵を生まなくなった、何回もつぶしてしまおうとしたができないでいた、と言うのは淋しい時に一緒にいるのはこの雌鶏だけだったし、雌鶏が鳴くと自分と話しをしているように思え、可愛いかったのである、寒くなれば鶏を家の中に入れて、囲炉裏のそばで暖めてやり、話し相手になってやったりしたのだ。
ある日、阿才は何か落ち着かず、夕食を食べたあと、横になってもなかなか寝つかれないでいた。すると突然雌鶏の“ココココ、コ”と鳴く声が聞こえた、阿才はお腹が空いたのだなと思い、起き出して餌を持って行って食べさせた。
すると雌鶏はいままでと違って、羽は光り、とさかは鮮やかな赤となり、何時もよりずっと元気になった。
翌日、阿才が山の仕事から帰ると、鶏の籠のなかに白くて丸い物が見える、手を伸ばしてみると、“ア、卵だ、白くてしかも大きい”阿才はながめたり撫でたりして喜んだ、それから毎日卵を生んでないかとみたが、雌鶏はこの卵を生んでから、二つ目は残念ながら生まなかった、阿才は一羽でも多いほうがいいと思い、この卵を雛に孵そうと考え、二十日過ぎた。
雌鶏はまた“ココココ、コ”と鳴き、声はますます大きくなる、阿才はまた雌鶏が卵を生むのかと思い、急いで家から出てみると、雌鶏が籠の中で不安そうに鳴き叫んでいる、耳を立てると雌鶏の声の外に変な音がする、阿才は屈んで近づくとその音は卵の中から聞こえて来る、卵を取り出してみると、卵の殻に一本ひびが入っているので指で軽く押してみると、殻が割れて中から緑色の目をしたまだら蛇が出てきた、阿才はびっくりして、思わず手を放した。
卵の殻と蛇が地面に落ち、小さなまだら蛇は“クク”と声を出した、阿才は急いでそばの棒を持って打ち殺そうと棒を振り上げると、まだら蛇は「阿才、やめて、これからあたしがあなたにいろいろしてあげるから」と言った。阿才はまだら蛇が人の言葉を話すばかりか、自分の名前も知っているのが不思議であった。そこでまだら蛇がいろいろしてくれると言うのを試してみようと「まだら蛇、俺は今晩、油で揚げた魚と牛の干し肉を食べたいが作ってくれるか」と聞いた。
するとまだら蛇は「いいですよ、どうぞ二階の竹楼の上から見ていて下さい」と答えた、阿才は半信半疑で竹楼へ上がって見ていると、お湯が沸きご飯がたけ、食卓にはいい匂いの油で揚げた二匹の魚と軟らかそうな干し肉が並んだ。それを見て阿才はこれは神の蛇だと思った。
それから阿才は毎日、出来上がったばかりの食事を食べ、何が食べたい、何が着たい、何がいると、言いさえすればまだら蛇がすぐそれを運んで来た。阿才は働くのが嫌になり、まだら蛇に声をかけると、翌日の朝には畑がきれいに耕されていた、秋の収穫にもまだら蛇に言うと、田畑の穀物が全部取り入れられた。こうして長い間に阿才はだんだん畑仕事も山仕事もしなくなり、ご飯を食べるには口を開けるだけ、着物を着るにも手を伸ばすだけという怠け者になってしまった。
阿才は食べる着るの暮らしの中で玉にきずと感じていたのは、まだら蛇が阿才の妻になる美しい娘を探せないことだった。
阿才が独りぼっちでブラブラ歩いていると、ふと一人の老人が“村長が全身からだが爛れ、何人もの医者に大金を出して診て貰ったのに、一年たって治らない、もし誰か村長の病を治してくれれば、村長は財産の半分出すと言っている”と話していた。
この老人は阿才がそばで聞いているのを見ると、笑いながら「阿才、どうだね、あんたが村長の病気を治せれば、村長の娘を妻にして村長の婿殿になれ、一生かかっても使い切れない大金が持てるよ」と言った、阿才はこれは妻の持てるいい機会だと思ったが薬のことは分からない、「薬りがあればなあ」と独り言を言うと、まだら蛇がそれを聞き「阿才、何を言っているの」と聞いた、阿才はさっき聞いた老人の話をして溜め息をつくと「もし俺が薬を探して村長を治せば、娘を妻に貰い、使い切れない大金が手に入るのだが」と言うと、まだら蛇は「わたしが探してあげる」と言って出て行くと、薬草をくわえて帰り阿才に渡した。
阿才が薬草を持って村長の家へ行き治療すると、数日して村長の爛れ病が治った、村長は喜び、婿に迎えたいと言った、阿才は村長の娘のそばかすの顔を見て「ありがとうございますがどうぞ、別な人を選んで下さい」と断ると村長も無理は言わず百五十両の金を出した、阿才は金を貰うと、酒を飲み酔って家へ帰り、まるまる三日も眠り続けた。
それから阿才は毎日、気にいった娘を妻にしょうと東奔西走して探した。ある日、阿才がある村に入ると悲しげな人の泣き声が聞こえる、阿才は前から来た石弓を背負った若者を呼び止め「もしもし、誰があのように悲しい声で泣いているのですか」と聞いた。すると若者は「わたしたちの村の長者が病気なり、死にそうなのです、それで長者の家族が泣いているのです」 「どうして医者に診せないのですか」 「もちろん、何度も薬草を持った医者が診に来ましたが、誰も治せないのです、年寄りが言うにはまだら蛇の胆があれば病気を治せると言うのですが、何処へ行ったらその蛇がいるのか分かりません、長者は『誰かがこのまだら蛇の胆を探し、わしの病気を治せば財産の半分を分け、もしそれが若い独身なら娘を嫁にやる、娘もそれを承知している』と言いましたが、それは水に写った月を掬うようなもので、誰にもそれができないのです」と言った。
阿才はそれを聞くとすぐ自分のあのまだら蛇を思い出し、長者の家へ行った、すると一人の娘が「お茶をどうぞ」とお茶を持って来た。娘の二つの美しい目は涙で潤んでいた。娘の顔立ちは花のようで、阿才はこの美しい娘に心を動かされ、娘が長者の娘であることを確かめようと「娘さんはこちらのご主人ですか」と聞いた、そばにいた女中が「長者のお嬢さんです、お父さんが倒れてから毎日涙を流し、本当に可哀相です」と言った、阿才は内心喜び、長者を見舞った、長者は気息えんえんとして囲炉裏の傍らに寝ていた、阿才は“この老人の病気がよくなれば、この家の物はみんな俺の物だ”と思い、娘に「わたしの家にあなたのお父さんの病気を治すまだら蛇の胆がありますから、取って来ます」と言った。
家へ帰るとすぐまだら蛇に「まだら蛇、お前の胆は病気に効くか」と聞いた「薬草で治らない病気はわたしの胆で治ります」 「それならお前の胆で長者の命を救いたい」と阿才は言った、まだら蛇は驚いて「駄目です、阿才、金銀と女の人以外は何でもあなたの欲しい物はあげました、これからもそれは変わりません、でもわたしの胆をとればわたしは死んで、あなたが欲しい物を出す人はいなくなります」と答えると阿才は怒って「つべこべ言うな、長者の家には牛や馬は数限りなく、食糧は食べ切れなほどある、金や銀もたくさんある、それに美しい娘がいる、お前の胆を取って長者の病気を治せば、それがみんな俺の物になるのだ」と言った。
まだら蛇はまた「阿才、もう一度よく考えて」と涙を流して悲しそうに訴えた。それでも阿才は「早くしろ、長者が死んでしまえばすべておわりだ」と言い放った。まだら蛇はしかたなく溜め息をつくと地面で体を左右に揺すると、小さなまだら蛇は大蛇になり、大きな口を開いて、阿才をお腹の中へ胆を取らせに入らせた。阿才は小刀を持って蛇の口からの光を頼りに蛇の体の中へ入り手探りで進み、胆を切り取った、すると蛇は死んで口を閉じた。阿才の目の前は真っ暗になり、蛇の頭も尻尾の方角も分からなくなった、こうしてまだら蛇は死んで口を閉じ、欲の深い阿才もまだら蛇の腹の中でもだえ死んだ。
西双版納哈尼族民間故事集成 1998.7.8