若い猟師と祈祷師 

 昔、むかし、密林の中に貧しい猟師とその息子が住んでいた。ある日、猟師は虎に襲われて食べられ、あとには息子がたった一人残された。
 息子は生きていくために若い猟師となって銃を担ぎ密林の中へ猟をしに出かけなければならなかった。しかし一日中森の中を歩いても何の獲物もない、腹が空き疲れ果て、しかたなくまた銃を担いで小屋に帰り、しばらく横になって休もうとすると、外から「助けて、助けて」と声がする。若い猟師は急いで火縄銃を持って外に出てみると、虎が龍をくわえて走っている、若い猟師は勇気を奮い、すぐ虎を追いかけ火縄銃で虎の尻を狙い“パン”と一発、虎をしとめ、龍を助けた。
 龍は「若い猟師さん、わたしは龍宮の公女です、もしあなたが救ってくれなければ、わたしの命はありませんでした、この恩は忘れません、わたしと来てください」と言った。そして龍は猟師を背中に乗せると空高く舞い、猛然と河の中へ突っ込んだ。

 龍宮に着くと、龍の公女は龍王に「わたしはこの勇者がいなければ、今日、命を失うところでした、わたしはこの勇者に恩を返さなければなりません」と言うと、龍王はうなずき「わかった、わしらは勇者に報いよう。若い勇者よ、何が欲しいかね」と聞いた、若い猟師は何を望んでいいかわからないでいると、公女は若い猟師を龍宮の倉へ案内し、好きな物を選ぶように言った。
 倉には金貨と銀貨が山のように積まれていた、公女は「もしあなたがこれを持って帰れば、一生食べるのに困らないでしょう」と言ったが若い猟師は金貨銀貨はいらないと思った。公女は次に武器の入った倉に案内し、一つの石弓を指し「もしあなたがこの石弓を持てば、あなたの狙う獲物は百発百中です」と言った、若い猟師はそれを聞いてこの石弓を選んだ。
 若い猟師は石弓を持って帰り、試してみると果たして狙いは百発百中であった。それから、若い猟師は獣を射れば獣を得、鳥を射れば鳥を得て、暮らしは日増しによくなり、食べ切れない物は何時も貧しい人にわけてやった。

 村には若い猟師を褒ない者はなかったが、村の祈祷師は若い猟師の暮らしがよくなっていくのを、だんだん妬むようになり、若い猟師をなんとか計りごとで死なせ、あの石弓を奪ってやろうと心に決めた。
 ある朝、祈祷師は国の王様のところへ行き「わたしは昨日、あの世へ行って、王様の父上に会って参りました、するとお父上はたいそう獣の肉を食べたがっており、わたしに猟師を一人あの世へ寄越すように王様に伝えてくれと告げられました」と言った。
 すると王様は「よし、猟師をあの世へやることのしよう、さて誰がよいかな」と聞いた、祈祷師が「あの若い猟師がよいと思います」と答えると、王様は「よし、明日の朝、あの若い猟師を袋に入れ、河に投げ込み、わしの父ところへ行かせろ」と言った。翌日、若い猟師は本当に袋に入れられ河へ投げ込まれた。

 ちようどこの日の朝、龍の公女が顔を洗おうとしていると、何か袋が流れて来たので、龍宮の役人に取って来させ、開けてみると今にも死にそうなあの若い猟師であった。公女は若い猟師の命を救い、いったいどうしたのかと聞いた、若い漁師はいままでのことを全て龍の公女に話した。それを聞いた公女は怒り、若い猟師を助け、祈祷師を退治してやろう考え、若い猟師をまたしばらく龍宮に住まわせたあと、金貨を持たせ、若い猟師に祈祷師を退治する方法を教えると白装束をさせて、再び河岸へ送り届けた。

 若い猟師は龍の公女に教えられた通りに、国の王様のところへ行き「ありがたき王様、わたくしは、首尾よくお役目を果たして参り、王様のお父上からもお褒めいただき、このように金貨と白装束を下さいました。そしてお父上はわたくしに“近頃、体の具合があまりよくない、祈祷師を一人よこして神に祈らせるように、王に伝えてくれ”と言いつけられて参りました」と話した。
 王様はすぐ祈祷師を呼び、祈祷師に父のところへ行けと言った。祈祷師は驚いたが、あの若い猟師があの世へ行って、金貨を貰って帰ったのだから、わしが行けばもっと歓迎されるに違いないと思い、夜の明ける前に袋に入り、河の中へ投げ入れて貰った。しかしこのあと、再び悪い祈祷師を見た人はいなかった。  

            西双版納哈尼族民間故事集成                 1998.7.3

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