無実な話四つ

 暇な男がブラブラ歩きながら、あちこち眺めていた。

 するとまず、一人の男がロバを放して稗の畑のそばの草を食べさせながらやって来た。そこへ稗の畑の主が来て稗が何かに食べられたあとを見つけ、男に「お前、何処の者だ、お前はどうしてわしの稗をロバに食べさせたのだ」と文句を言った、ロバを曳いた男は「俺はロバに稗を食べさせてはいない」と怒った。「ここを見てみろ」 「これは俺のロバの食べたあとではない」 こうして二人は喧嘩をやめない。
 その騒ぎで役人が来て「他人の作物を自分のロバに食べさせてはいかん」と言った。「ロバに草を食べさせてはいけないのか」 「それはいい」 「それなら俺はロバに稗を食べさせていないから冤罪だ」 「だが、畑の主はお前のロバが食べたと言っている、食べさせていないと言うなら、ロバの腹を割いて見せろ、そして腹に稗の粒があったらお前は稗を弁償しろ」 ロバを曳いた男は怒って、刀を振り上げロバの腹を割き「稗の粒があるかないか見てみろ」と怒鳴った。ロバの腹の中は青草ばかりであった。稗の畑の主はロバの一倍半の金を弁償した。

 それを見た暇な男は「可哀相なのは何の罪もない無実なロバだ」とつぶやきながらまた行くと、ある郷士の家の門前で木魚をポクポク叩き、念仏を唱え浄財を求めて托鉢する坊さんがいた。家からはまだ誰も出て来ない。
 そのうちに何か物売りが来たのかと珠を持った四、五歳の子供がポクポクと木魚の口真似をしながら家から、うかれて走って来て、持った珠を落とすと門前にいたアヒルの群れの一羽がその珠を啄ばんで食べてしまった。
 子供は珠がないのに気がつき「ワー」と泣き出した、家人がそれを聞きつけて出て来ると「何で泣くんだ、珠はどうした」と聞き、子供が珠をなくして泣いていると分かり、大事な珠なのであちこち捜したが見つからない。家人は門前の托鉢の坊主が取ったのではないかと疑い、子供に「坊さんに取られたのか」と聞くと何でなくなったのか分からない子供はただ「ウー」と言った。「この騙り坊主、お前が盗んだな」とその家の郷士が坊さんを責めたが坊さんは承知せず「お前さんが信じないなら、裸になって見せよう」と言ったが、金も権勢もある郷士は「ふざけたことを言うな」と坊さんを殴り続け、坊さんは動かなくなってしまった。

 さて、その様子を見ていた暇な男はそのまま昼ぐらいまで歩くと、一人の百姓が犂をつけたままの牛のそばで昼寝していた。そこへ人間の匂いを嗅ぎつけた狼が来てこの百姓を食べようとした、牛は主人が危ないと角で狼に突きかかり狼は逃げて行ったが、牛は植えつけの苗を踏み潰してしまった。
 そこで百姓が目を覚ますと植えつける苗が踏み潰されている、「この馬鹿牛のひねくれ者、俺が休んでいるうちに何したんだ」と怒り、牛に休まず犂を曳かせた。
 牛が疲れてノロノロすると、百姓は一足ごとにトウトウ、ラ、ラ、タアタアと鞭を当て、犂が土に深く入り牛はますます疲れ、満身に汗を流し、とうとう死んでしまった。

 それを見届けた暇な男がまた歩いて行くと一軒の家があった。この家には七、八人の家族がいる、主は四十を過ぎた男で妻と妾がいる。妻は口がきけない聾者で、妾は二十歳になったばかりの若い女だが、男からまるで家畜のように苛められるので年の若い妾は男を殺そうと思い、男の留守の間に毒入りの餃子を作り、男が帰ると男の前に出した。
 それを知った妻は夫の椀を取り上げ身振りで食べさせまいとするが話すことができない、夫は何のことか分からず椀を持って食べようとする、するとまた妻が椀を取り上げる、二度三度それを繰り返すと夫は怒り、餃子の入った椀ごと妻の頭に投げつけ妻は死んでしまった。土間に餃子が散らばったところへ犬が来てこの餃子を食べコロリと死に、夫はやっと事情が分かった。

 そして、暇な男はこうつぶやいた。「稗を食べぬに腹を割かれてロバは災難、アヒルが珠を食べて坊主は災難、牛が主を救い鞭に死す、妻が夫を救い命失う」と。  

            中国民間文学集成遼寧巻撫順市巻下                      1998.1.20

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