杏 売 り
昔、一人の杏売りが杏を担いで市場へ売りに行きました。市場に来た人みんなに声をかけましたが、買う人はいません。
やがて一人の老婆が来て「この杏は甘い、酸っぱい?」と聞きました、杏売りは普通は誰でも甘いのが好きだと思い「わたしの杏は甘いですよ」と答えました、すると老婆は「あ、甘いの、うちの爺さんは酸っぱいのを食べたがり、甘いのは食べないからね」と言うと行ってしまいました。
杏売りはまたじっと客を待ちました。昼になって、やっと若者が来て「この杏は甘いの酸っぱいの?」と聞きました、杏売りは今朝、あのお婆さんに甘いと言ったら買っていかなかったから、今度は「わたしの杏は酸っぱいですよ」と答えると、若者は手を振って、「ダメダメ、俺は酸っぱいと歯が浮いて食べられない」と行ってしまいました。
杏売りはまたじっと客を待ちました。夜になって、やっと一人の中年の客が来て「この杏は甘いかね、それとも酸っぱいかね」と聞きました、杏売りはお婆さんは甘いのを嫌い、酸っぱいのがいいと言い、あの若者は甘いのがいいと言った、今度こそと思い「この杏は口に入れると甘く、噛むと酸っぱいです」と答えました、すると中年の客は「う−ん、それじゃやめよう、口に入れて甘く、噛んで酸っぱい味はよくない」と言いました。そこでこの杏売りは一日中市場にいて、杏は一斤も売れませんでした。
撫順市巻下 1997.12.8