此の処大小便禁止

 昔、田舎にある男が住んでいた。人はこの男が字を知らないからと嫁を世話したがらなかった。ところが、ある人が仲人になって町の娘を紹介してくれることになり、男は喜んで会う日を決めて行くことにした。  

 見合いにはいい物を着て行かねばと思ったが、いい着物をみんな着て行くわけにはいかない、これを着て、その上にあれを着てとやってみたが恰好よくない、そうだ、塾の先生に頼んでみようと出かけた。「先生、お願いがあります、今日わたしはお見合いをします、それで緞子の一張羅を着て行きますが、家にはまだ緞子のいい着物があるんです、それをみんな着て行っても相手の娘には見えないし、体裁もよくない。だから“家にはまだ緞子の着物が一着ある”と一筆書いてくれませんか」 「よし、書いてあげよう」と先生はそれを紙に書いてくれた。

 男はこの紙を背中に貼り、家へ帰ってトウモロコシの饅頭を土産にして出かけた。
 男は町に着くと俄かにもよおしてきたので、便所を探したが男は“便所”という二字も知らないから、便所がわからない。我慢できなくなって家並の横丁の隅を見つけると、周りに人のいないのを確かめて、着物をからげて糞をした。
 そこへ人が来たので慌てて立ち上がりそこを離れて急いで歩きはじめたが歩いているうちに背中に貼った“緞子の着物もう一着”と書いたあの紙がなくなっているのに気がついた、何処に落としたのだろうと戻ってみたが見つからない、これでは家にもう一着緞子の着物があるのを表せない。アッ、そうだ、きっと糞をしたあそこで落としたのだと気がついて行ったが、ない。

 横丁の隅の壁に“此の処大小便禁止”と貼り紙がしてある、男はこれを見ると紙の大きさが同じなので、この紙を無理やりに剥がすとまた背中に貼って行った、男は歩きながら、この紙を見れば娘は俺がまだほかに緞子の着物を持っていることがきっと分かるだろうと思っていた。

 娘の家に着いくと、男は前にいる娘がこの紙を見ないといけないと、背中を娘の方に曲げてみせた。娘はすぐ「あんたの背中のそれなに」と聞いた、男が羞しそうに「いいえ、何も」と言うと娘はまた「あんた何食べたの」と聞いた、「ハイ、わたしたち田舎には何でもあります、お米、小麦粉、欲しい物は何でもあります」 「違うわよ、そんなに食べて、そのあとどうするのよ」と娘が困ったように顔を振ると男は「わたしたちの田舎の者は糞を町でします」と答えた、「ア−それで、あんた“此の処大小便禁止”と書いたのね」と言った。  

              撫順市巻下                                 1997.12.7

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