烏の羽はなぜ黒い
年寄りの話によると、烏はもとは羽が雪のように白く、声は綺麗に澄んでいたそうだ。それが今、烏はどうしてあのように羽は黒く、声はしゃがれているのだろうか。
昔、鳥や獣はみんな一緒に山や森で暮らしていた。虎と熊と猫も大きな石の洞窟に一緒に住み、食べ物は互いに譲り合って食べ、歌ったり踊ったりして遊び、疲れると、俺お前と寄り添って寝てまるで兄弟のようであった。
ある日、虎は兎をくわえて洞窟に帰ると、兎をおいて谷川へ水を飲みに行った。それを洞窟の前の木に止まっていた烏が見ていた。食いしん坊でおまけに怠け者の烏は、柔らかそうな兎の肉のいい匂いを嗅ぐと、よだれをたらしながら、兎は飛び跳ねるから捕まえるのは難しい、盗んで食うのが一番だと考え、虎が川から戻って来ないうちに兎を食べてしまった。
虎が水を飲んで帰って来ると置いておいた兎の肉がない、アレと周りを見ると木の上で居眠りしている烏がいたので虎は「烏さん、わしが捕まえて来た兎を知らないかい」と聞くと、烏は「さっき、熊が帰って来て兎を食べて出て行ったよ」と嘘をついた。
「本当かい」 「わたしは嘘は言わないよ」暴れん坊の虎はそれを聞くと「熊の野郎、よくもわしを裏切って、盗み食いしたな」と怒った、そこへ熊がノコノコ帰って来た。「やい、熊、わしが捕って来た兎を食ったな!」熊はびっくり、「虎の兄貴、俺は今帰った来たばかりで兎の肉なんて見なかったよ」と言うと、虎は「嘘つけ、烏が上からみんな見ていたんだ」と言い、烏は木の上で「熊の兄い、謝ったほうがいいよ」と口をはさんだ。熊が「俺は食べていない、何かの間違いだ」と言い張ると、虎はせせら笑い「強がりを言う強情な熊だ、それならわしがお前を食ってやる」と飛びかかった、熊は驚いて逃げ、大きな木の穴を見つけるとその中にもぐり込んでしまった。虎は熊を見失ってしょうがなく洞窟に戻って行った。その時から熊はずっと木の穴や土の穴に住むようになった。
熊がいなくなると洞窟には虎と猫だけになった。
ある日、虎は雉をくわえて来ると猫が帰って来たら一緒に食べようと雉を置き、猫を待っているうちに眠くなって寝てしまった。木の上の烏はそれを見ると、雉の肉はきっと兎の肉よりもっと美味しいに違いないと唾を飲み、また雉を盗んで食べてしまった。
虎は目を覚ますと雉がなくなっているので、また烏に「わしの捕まえた雉を見なかったかい」と聞いた、すると烏は「さっき、猫が帰って来て雉を食べると出て行ったよ」とまた嘘をついた。虎は跳び上がって「チビ猫め、わしを裏切ってよくも雉を盗み食いしやがったな!」と咆えた。
その時、猫が帰って来た、虎が「チビ猫、わしの雉を食べたな」と言うと、猫はびっくりして「虎さん、わたしは今帰って来たばかりで雉など見てないよ」と言うと、虎は「嘘つけ、烏が上からみんな見ていたんだ」と言い、烏も木の上でまた「猫の兄い、謝ればいいんだよ」とからかった。猫は頑固に「わたしは食べてない、何かの間違いだ」と言った。
それを聞くと虎は牙をむきだし「強情な猫だ、こうなったらお前は閻魔の処へ行け!」と猫に跳びかかった。猫は素早くサッと逃げ、虎に追いつかれそうになると、パッと木に登り、それから人の家の中へ逃げた。それから猫はずっと人の家に住むようになったのだ。
こうして虎は熊と猫がいなくなり、一人ぼっちになってしまった。
ある日、虎は羊の肉の塊をくわえて来たが、熊と猫を思い出すと淋しくなり、食べる気にもならず羊の肉を洞窟の中に置いて散歩に出た。盗んで食べることに慣れた烏はそれを見ると、すぐ洞窟の中に飛び下りた。
さて、虎は洞窟から散歩に出てみたが、一人では面白くも何ともないので、すぐまた洞窟に戻ると、烏が羊の肉をくわえて洞窟の中から飛び上がった。
これで虎は今までのことをみんな悟り、木の上の巣に逃げた烏に「お前がわしの兎や雉を盗み、わしの友だちのせいにしたのだな。こんどはわしがお前を一口に食べてやる」と木に這い上がろうとしたが虎は木に登れない、それでも虎は前足と後足の爪を立てて登ろうとしたが初めは口、二回目は牙、三回目はお尻を打って落ちてしまった。烏は巣の中から「獣の王様の虎が木に登れず尻もちついた」とからかってカッカッと笑った。虎は怒って雷のように咆え、森中に響かせた。
ぬれぎぬを負わされた熊と猫は前からあれは烏の仕業と疑っていたのだが、これを聞いてはっきりしたので、猫は怒る虎に「虎さん、わたしたち地面を走る者は空を飛ぶ者をやつけることはできないから、ここは我慢するしかないよ、行こう行こう」と言って、虎と熊に目配せして引き上げると、烏はいい気になってその晩は虎から盗んだ羊の肉を腹一杯食べて寝た。
そして日向ぼっこで羽が温かくなる夢を見た、夢の中でだんだん羽が熱くなり慌てて目を覚ますと巣が燃え白い羽が黒く焦げていた。
これは昼間、猫が虎と熊を連れて引き上げ、烏に油断させておき夜になって烏がぐっすり寝込んだすきに木に登り、烏の巣に火をつけたのだ。それで烏の白い羽は黒焦げになり、声は煙でしゃがれてしまった。それからずっと烏の羽は黒く声はしゃがれたままになった。
虎は猫に烏をやっつけてもらって嬉しくなり、また熊と猫と一緒に住もうと言ったが、熊と猫はこのことがあってから、虎は何かあると顔色を変えて暴れることがわかり、熊も猫も虎とは別れ、熊は大きな木の穴に、猫は人の家に住むようになった。
薛天智故事選 1997.11.14 2001.11.20 校正