神の九官鳥

 昔、ある鳥の好きな人が一羽の九官鳥を飼っていた。この九官鳥は馬鹿で、ただ『ソノトウリ』の一言しか言えなかった。
 もし誰かが「九官鳥、お前は青虫が一番好きなのだろう?」と聞くと、九官鳥はきまって『ソノトウリ』と答える。「九官鳥、籠の中にいるのはいやだろう?」と聞けば『ソノトウリ』、「九官鳥、お前馬鹿だろう?」と言えば『ソノトウリ』と、何を聞いても九官鳥はこの一言しか答えなかった。

 この九官鳥を飼っている人の家から遠くないところに元宝山という村があった。村には姓は譚だが“強欲”と呼ばれた大金持ちがいた。“強欲”はこの村の田畑を一人占めにして農民を苦しめ、悪いことばかりするので村人たちみんなから恨まれていた。畑仕事を始める季節になると“強欲”は朝早くから畑を回り、作男たちを見張って働かせるので、九官鳥の飼い主は何時か“強欲”を懲らしめて貧しい農民たちの気を晴らしてやろうと考えていた。

 ある日、九官鳥の飼い主は“強欲”より早く起きて、金や銀を細かく砕いて懐にいれ手には鍬を持ち、元宝山村へ行くとその砕いた金銀をそっと道のわき、荒れ地、畑の隅などに埋めておいた。
 そして“強欲”が来ると、あちこち歩き、眺め、何かを捜し回るふりをし“強欲”がそばに来ると知らんぷりして、わざと大きな声で九官鳥に「九官鳥や、この荒れ地には銅銭があるだろう?」と聞き、九官鳥がしっぽをあげ頭をおこし『ソノトウリ』と答えると、先に埋めておいた沢山の銅銭を鍬で掘り出した。
 それからまた道のわきに立って「九官鳥や、ここに銀の粒があるだろう?」と聞き、九官鳥がうなずいて『ソノトウリ』と答えると、またさっき埋めた銀の粒を掘り出した。“強欲”はこれは不思議だとそっと九官鳥の飼い主のうしろに回ってそっと見ていた。

 九官鳥の飼い主は畑を回り、馬蓮花の咲いたところへ来ると「九官鳥や、馬蓮花の下に金があるだろう?」と聞き、九官鳥がまたあの決まり文句『ソノトウリ』と答えると飼い主はわざと長い時間をかけて、馬蓮花の下を掘りその根まで掘り出すと、汗をかき息をゼイゼイさせ、埋めておいた金の耳輪二つを土の中から拾いあげた。“強欲”はこれを見ると「オ−、神様、この九官鳥は神の鳥だ、そうじゃなければ金銀財宝が何処にあると分かるわけがない」と声を上げた。

 “強欲”は金を見ればて欲しくなる……だから“強欲”と呼ばれているのだ。“強欲”は心の中で“俺がもしこの神の鳥を手に入れれば、万貫の財宝なぞ何でもないし、毎日、面倒なことをしないで大地主にもなれる”と考えると、目玉をギョロリとさせて九官鳥の飼い主に近づいて、とても丁寧に「もしもし、あなたその鳥をわたしに売ってくれませんか」と言った。
 「売りません。これは天山仙人の洞窟の鳥で、天下に一羽しかいません」 “強欲”が「神の鳥ですね」と言うと九官鳥が『ソノトウリ』とあの一句で答えたので、“強欲”はまた「あなたわたしに売ってくれませんか、いくらでもいいです」と言った。
 九官鳥の飼い主はわざとむずかしそうな顔をして「売りたくなくはないが、わたしの家族はみんなこの神の鳥のおかげで暮らしているのです、神の鳥がなくなれば、わたしはどこへ行って金銀財宝を捜せばいいのか分からなくなりますからねえ」 「銀貨三百両、田畑二十と十の山をあげましょう。それだけあればあなたが一生、美味しいものを食べたり飲んだりして暮らすのに十分でしょう。それに毎日あっちへ行ったりこっちへ行ったりして、あちこち掘る手間もなくなり疲れなくてすみますよ」

 九官鳥の飼い主はわざといろいろ考える振りをしてから「こうしましょう、銀貨三百両とあなたがもっている村人の生涯雇用の契約書と家と土地の契約書をわたしにください、その二十の田畑、十の山はいりません」九官鳥の飼い主は村人たちが“強欲”にとられていた土地と家を取り返し、銀貨三百両をとればいいと考えたのだ。“強欲”はこれを聞いて安く手に入れたと思い、その日に銀貨三百両と沢山の契約書を九官鳥の主に渡した。  

 “強欲”は金の網の鳥籠を作り、九官鳥を祖先の霊の前に供え嬉しくて一晩眠らず、元宝山村の民謡を歌い続けた。

 <元宝山は宝の山よ/昔からの言い伝え/瓶が九つ鍋十八/南になくて北にある>

 “強欲”は目をつぶり、山のような金貨銀貨、翡翠、瑪瑙……の夢を見て腹の底から嬉しさがこみあげてきた。
 翌日夜明け前、まだ鶏が時を告げないうちに、“強欲”は作男や作男の子供たちを「起きろ、起きろ、早くしろ、鍬とツルハシと麻袋を持って早く馬車に乗れ」と起こし回り、八輌の馬車に乗せ、村を出て真っ直ぐ元宝山へ向かった。
 作男たちは今日はどうしたんだ、なんでこんなに早く起こされたのだと不思議に思ったが、誰も分からないし、誰も“強欲”には聞けなかった。八輌の馬車はドドドドと音をたてて、陽の昇る元宝山の南山に着くと“強欲”は馬車から飛び下り、山を一周りして一つの場所を見つけると、九官鳥の飼い主の真似をして九官鳥に「九官鳥や、ここには銀貨があるだろう?」と聞くと九官鳥はしっぽをひろげ頭を上げて『ソノトウリ』と言った。

 “強欲”は作男たちに「ここに銀貨がある、掘れ」と命令すると、作男たちは鍬、ツルハシで、土をとり石を運び半日も掘ったが銀の小さな粒すら見つからない。“強欲”は九官鳥に「ここの銀貨は深いところに埋まっているのかな」と聞くと九官鳥はうなずいて『ソノトウリ』と答えた、“強欲”は作男に向かって手を振り 「もう掘るな、上へ行こう」と言った。
 上へ登り強欲はまた「九官鳥や、ここに金貨があるだろう?」と聞くと九官鳥は『ソノトウリ』と答えるので“強欲”は手をあげ「掘れ」と言う、そこで作男たちはまた掘りはじめ、日暮までに大きな穴を掘ったが金貨の影も出ない、“強欲”はまた「ここの金貨は深いところにあるのだな」と言うと『ソノトウリ』と九官鳥が答えた。

 そこでまた“強欲”は手をあげ「行くぞ」と作男たちを八輌の馬車に乗せ元宝山の北へ行く。“強欲”は村の民謡にあるように九つの瓶十八の鍋は南にはないのだ、きっと北にあるのだろうと考えたのだ、地形を見て一つの丘を指して九官鳥に「九官鳥や、九つの瓶十八の鍋はあの丘にあるのだろう?」と聞くと、九官鳥は『ソノトウリ』と答える、「ここには深く埋ってないだろう?」と聞くと、九官鳥は『ソノトウリ』と答える。
 そこで“強欲”が首を伸ばして大声で「掘れ」と叫ぶと、作男たちはまた掘り、とうとう丘は平になってしまった、でもやはり金貨はない、作男たちは朝早くから日暮れまで何も食べず、喉がかわきお腹が空いて倒れる者もあった。強欲は両目を吊り上げてまた九官鳥に聞いた、「九官鳥やお前は南は深く、北は浅いと言った、でも何処を掘っても金貨はでない、お前、俺を騙したな」 『ソノトウリ』 「エッ、お前言えるのはそれだけか」 『ソノトウリ』 「アレ−、俺は騙された」 『ソノトウリ』 九官鳥は“強欲”の手から離れ空に飛び上がった、“強欲”は九官鳥を捕まえようとしたが空をつかみ、目がくらみ倒れてしまい「お前は俺を苦しめたのだな」と力なく言うと、九官鳥は空に飛んで半円を描き、からかうように『ソノトウリ、ソノトウリ』と叫んだ。

           沈陽市巻中                                 1997.1.13

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