生き仏に会う話

 昔、東沙河村の東に、人のいい老夫婦が小さな家に住んでいた。ある日、老夫婦は「わしらは今まで悪いこともせずこうして生きてきた、もう先も短い、だがまだ生き仏に会っていない、どうだい、わしら二人で西方の生き仏に会いに行こうじゃないか」 「いいねえ」と話し合った。
 翌日、さっそく老夫婦は小さな家をたたみ、西方に向かい、いくつもの山や河を越え、何日も歩いたが、生き仏には会えなかった。
 ある日の昼、老夫婦が道端の木の下で休んでいると、遠くの方から豚殺したちが大きな豚肉を担いでやって来るのが見えた、豚殺したちが老夫婦の前に通りかかると、肉きり庖丁を持った豚殺しの一人が「お二人のご老人は何をしに行くのですか」と聞くと、老夫婦は「わしらはずっと善人として生きてきて、年をとりました、だから西方の生き仏に会いに行くのです」と答えた。それを聞くと豚殺しはすぐ肉きり庖丁をしまい「お二人さん、わたしを一緒に連れて行って下さい、お願いします」と言った、老夫婦が「お前さんは殺生しているから生き仏に会えないかもしれない」と言うと、その豚殺しはきっぱりと「わたしは今から殺生をやめ善人になります」と答えた。

 老夫婦は豚殺しが真剣なので「いいですよ」と言うと、その豚殺しは持っていた豚肉をみんな仲間の豚殺しに売って金を貰い、老夫婦について行った。 道中で豚殺しは老夫婦の世話をするばかりか、貧乏人をみると豚殺しは持っている金を出して助けてやった。こうして三人は何日も歩き、とても疲れ、金もなくなってきて、どうしょうかと心配になり始めた。
 ある日の夕方、宿屋に着くとしばらくして、百歳を越えたような白い髭の慈悲深い顔の老僧が来て、三人に「お前さんたちは、何処から来て、何処へ行くのかね」聞いた、三人は「わたしたちは、修行して西方の生き仏に会いに行く善人です」と答えた、老僧はそれを聞いてうなずくと「お前さんたち旅をするだけでは生き仏には会えないよ。ここに二本の固い杖と固い瓜があるが、その固い瓜をよく煮て、それと固い杖の二つを持って西方に行けば生き仏に会える」と教えてくれた。三人はそれを聞くと喜び、老僧に礼を言うと、老僧は「明日の朝わしが煮えたかどうか見てあげよう」と言って出て行くと見えなくなった。

 三人は宿に入り、固い杖と固い瓜を一つずつ、老夫婦と豚殺しの分にわけると、老夫は豚殺しに「わしら二人は山へ柴をとりに行き、婆さんには宿で固い瓜を煮て貰おう」と言った、すると豚殺しは「お二人はご老体だから、わたしが一人で柴を刈って来ます」と言って、もう夜なのに山へ柴をとりに行った。
 老夫婦は二つの固い瓜を別々に二つの鍋に入れ、火を起こして煮はじめた。しばらく煮ていたが、老夫は狡い心を抱き、そっと老妻に「わしらの鍋に多く柴を燃せ、豚殺しのほうは一束でいい」と言った、老妻は「わかっているから、お前さんは寝ていいよ」と言った。
こうして、豚殺しは寝る間もなく朝まで山へ柴を刈りに行ったり来りして汗びっしょりになったのに、柴は老夫婦の鍋の方に多く燃されてしまった。

 翌日早く、老僧が来て「煮えたかな」と聞いた、老夫婦は「よく煮ました」と答えると老僧「じゃあ、わしが見よう」と言って、はじめに豚殺しの鍋を見ると、固い瓜はやわらかによく煮えていた、老僧は豚殺しに「よしよし、お前は生き仏に会いに行ける」と言い、西の方を指さしながら、ここを出て西へ行くと河があり、一本橋がかかっている、それを渡れば生き仏に会えると教えた。豚殺しは老僧に礼を言うと真っ直ぐに西へ向かった、やがて大きな河が見え一本橋がかかっている、だが橋は腐っていて人が渡れば橋は落ちて死んでしまうかもしれない。しかし豚殺しはもう生死を越えていて少しも恐れず橋を渡って行った。

 さて、老夫婦は豚殺しの固い瓜が一束の柴で煮えていた、でもわしらは一晩中煮ていたから、もっとよく煮えているだろうと思って喜んでいた。老僧が老夫婦の鍋の蓋をとると湯は煮えたぎり湯気が上がっていた、しかし、固い瓜はもとのまま、老夫婦は目を丸くして驚いた、すると老僧は「お前さんたちの瓜まだ煮えていないから生き仏には会えない」と言った、それでも老夫婦は一心に頼むと老僧は「お前さんたちが本当に行きたいなら、行けばいい」と言ってくれたので、老夫婦は喜び、老僧が豚殺しに教えた通りに西方に向かって行った。

 老夫婦の二人はあの大きな河に来て一本橋を見た。あたりを見たが外に道はなく、西方に行くにはその一本橋を渡るしかない、もう一度一本橋を見ると一本橋は腐っていて人が渡れば落ちてしまう、驚いた老夫は老妻に「お前先に渡れ」と言うと、老妻も怖くなって「お前さんが先に」と二人とも、河に落ちて死ぬのが怖く、どちらも先に渡ろうとしない。
 老夫が「じゃ、手をつないで一緒に渡ろう、生きても死んでも一緒だ」と言って、二人で手をとって橋を渡りはじめ、橋の真ん中まで来ると“ガタン”と音をたてて橋が落ちて老夫婦は河の中に落ち、固い杖も固い瓜も河の底に沈んでしまった。
 杖と瓜がなければ生き仏には会えないと老夫婦は老夫が「コン」と叫び、老婦が「グワ」と叫び河の中で杖と瓜を探し回った。こうして老夫婦は「コン、グワ」と叫びながら河を泳ぎ回り、とうとう蛙の夫婦に変わってしまった。

             沈陽市巻中                                     1997.9.19

はじめに戻る