勤児と福財

 昔、鄙びた小さな山里に同じ年、同じ月、同じ日に生まれた二人の男の子がいた。一人は金持ちの家に生まれ福財と名づけられ、一人は貧乏な家に生まれ勤児と呼ばれた。
 月日は矢のように十六年過ぎ、福財も勤児もみんな大きくなった。福財には先生がついたが学問はできず、甘やかされて育った。だが勤児は畑を耕し父母を助け苦労していたが、頭はよかった。

 ある時、山の奥に雲、霧に乗って、雨、風を呼び、石を金にする非凡な道士がいる、もしこの道士の術を会得する者がいれば栄燿栄華、間違いなしという旅人の話が伝えられた。そこで福材、勤児のどちらの親も自分の息子にこの道士の術を学ばせようと旅の支度をさせ、一緒に旅に出した。
 二人は山奥に入り道士に会うと、道士は若い二人を見て弟子にしてくれた。勤児は朝早くから夜おそくまで、柴を刈り、水を運び、庭を掃いて、師匠の道士を助けたが、福財は怠けてただ食べて寝るだけだった。

 何時の間にか三年が過ぎ、ある日、師匠の道士は二人を呼び「今日はお前たちに術を授けよう、お前たちはどんな術が学びたいのだ」と聞いた。福財が「師匠さま、わたしはたくさんの金貨が欲しいのです」と答えると、道士は「よし」と言って、天を指さし拳を握り、手を広げると中に一頭の小さな金の牛があった、道士がまた指で金の牛をさすと、金の牛はどんどん大きくなり、息を吹きかけると、金の牛は生きた牛に変わった。すると道士は「家へ帰って、鉄を買いこの牛に食べさせれば、この牛の糞は金貨に変わる」と言った。

 つぎに道士は勤児に向かい何を学びたいかと尋ねた、勤児が「わたしは大きな力を持ちたいのです」と言うと、道士はうなずき、腰に下げた錦の袋から小さな丸薬を取り出し「勤児、これを飲めば無限の力がでるようになる」と言った。二人は山から家に帰った。勤児は比べようのない力持ちになり、畑を耕すにも牛や馬を使わず、半日で家の畑を耕してしまった。福財の方は父親が鉄を買って牛に食べさせると、果たして牛はキラキラ輝く金貨の糞をするようになったが、父親は福財に「たしかに鉄は金貨に変わったが、俺たちは鉄を買うのに金を使ったから、採算はとれてない、一番いいのはお前が道士の所へまた行って、声を出せば声が金貨に変わる物を貰って来ればよいのだ」と言った。そこでまた福財は勤児に声をかけ、再び一緒に道士の所に行くことにした。

 二人は道士に会い「師匠さま、わたしたちはまだ学びたいことがあります」と言うと、道士は「お前たちがまだ学びたいというのは何だね」と聞いた。福財が「声を上げれば金貨が出る宝をわたしに与えたください」と言うと道士は「よし」と言って、福財に宝の盆をくれた、福財が「金貨をくれ」と叫ぶと宝の盆はカラカラと音をたて盆の中に金貨を出した。
 道士は勤児にも「お前は何が学びたいのだね」と聞いた、勤児が「わたくしは力があるようになりましたが、少々知恵がたりません、どうかわたくしに知恵を与えてください」と言うと、道士はまた錦の袋から、小さな包み袋を出して「これを耳にあてると、お前にどうすればよいかを教えてくれる」と言った。二人は道士に礼を言って山を下り家へ帰った。
 帰る途中、森にさしかかると、突然“ウオ−”と虎が襲いかかってきた、福財は驚いて宝の盆を抱えて這いつくばった。しかし勤児は慌てず前に進み、虎が襲いかかった一瞬、とっさに身をかわし虎の腹を蹴り上げた、さすがの虎も“グワ−”と叫び地面に倒れると勤児は虎にまたがり一撃し、蹴り倒おすと虎は死んでしまった、勤児は虎を担いで帰り、虎の骨酒を作り父親に飲ませると父親の神経痛の病が治った。

 ある日、宮廷の宝玉が盗まれ、皇帝はこの事件を解決した者は官にとりたてるというお布れを出した。福財が先にこの布告を見て事件の解決を皇帝に申し立てた。福財は国宝の倉を守る兵士たちをひきだし厳しい拷問にかけ、事件を解決しようとしたができず、かえって皇帝を欺瞞した罪に問われ、家族は牢獄に押し込まれ、あの金の牛も宝の盆もすべて没収されてしまった。

 勤児もこの布告を見て皇帝に申し出ると、勤児は道士から伝授された小さな包み袋を耳にあてしばらくして、宮廷の従者に黒い鍋を持って来させ、明るい部屋のなかにおき、勤児は道士になりすまして兵士たちの前で「ここに宝の鍋がある、この鍋は宝玉を盗んだ者が撫でるとすぐ音をだす、一人ずつ部屋に入ってこの鍋を撫でおわったら、わしが検査して犯人を割り出す」と言った。
 実は勤児はあらかじめ鍋の底に黒い粉をつけておき、これを宝の鍋だと言ったのだ。そうすれば、盗まない者は平気で鍋に触るが、犯人は鍋が鳴るのを恐れて触ろうとしないはずだから、手に黒い粉がついていない者が犯人とみたのである。

 事件が解決したあと、皇帝は勤児を官に任命したが、勤児はあの小さな包み袋を耳にあてると、皇帝の褒賞を謝絶して家に帰り畑仕事をして暮らした。  

            沈陽市巻中                                     1997.8.10

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