三人の義兄弟
昔、三人の男が年の順にそれぞれ大兄、中兄、末弟となって義兄弟の杯を交わすことになった。大兄と中兄には、人を騙して飲み食いする癖があったが、末弟は真面目な人であった。
大兄は契りの式が終わったら飲もうじゃないかと、「俺たち三人は今日から義兄弟になったから三人の割り勘にすることもあるまい、どうだ、俺が問題を出すから、負けた者がその勘定を持つことにしょうじゃないか」と言い出した。中兄も「そうだ、そうだ、それがいい」と相槌をうった。
それを聞いた末弟は俺を鴨にするんじゃないかと思ったが、大兄が言い出し、中兄が同意したら、俺がいちばん下なんだからと、何も言えずにいた。「聞いてくれ、これから俺たちは題も決めず何でも好きなことを自由にしゃべりまくり、そのしゃべりのなかで“馬鹿な”とつぶやいた者が負けということにしょう」と大兄が言うと、中兄が「よかろう」と答えた。
するとすぐ大兄が言った、「昨日,俺のとこで不思議なことがあったんだ」 「何だい」 「ゆうべ庭の井戸が盗まれて、朝みると井戸がないんだ」 「フ−ン、ゆうべ夜中に俺んちの屋根から下に水が落ちたが、そいつは俺んちの屋根の上を担いで逃げたんだな」と中兄が言った。
末弟はそれを聞いてそんな馬鹿なことがあるかと、言いそうになったが唾を飲みこんで何も言わなかった。中兄は続けて「そう言えば、俺はこんなことを思い出した、聞きたくないか」 「なんだ、なんだ」 「ゆうべ何処からか来たロバに石臼三つを一度にかじられてしまったんだ」と言った。
末弟はそれを聞くと「兄さんたち二人の話は大馬鹿な話じゃないですか、そんなことあるわけない」と言ってしまった。
大兄は「決まった、決まった、中兄、末弟のおごりに決まった、末弟は“馬鹿な”と言ったからな、あした朝からお前の家に行くよ、美味しい料理をいくつか作っておいてくれ」と言った、「ウ−ン」と末弟は負けてしまった。
末弟は家に帰った。女房は何時もニコニコしている亭主が今日は浮かない顔をして、フウフウ溜め息をついているので女房が「どうしたの何か心配事があるの」と聞いた、「ウ−ン、嫌なことなんだ」と今までのことを話した。「ア−、そういうことだったの、それなら明日の朝はあんた寝ていていいわよ、あたしがうまくやるわ」 「大丈夫か」 「あたしに任せなさい」
翌日の朝、大兄と中兄の二人は、「行こう、行こう、料理が冷めてしまうと、美味しくないからな」 「そうだ、そうだ」と大兄と中兄は末弟の家に行った。
家に着いて中に入ると、末弟の女房がかまどの前にしゃがんで火を起こしている。「アレ、奥さん、これからですか、早すぎましたか」 「お兄さんたち、ちょうどよかった、うちの人は昨夜大変だったんです」 「何が大変だったんです」 「お兄さんたちの賭でうちの人が負け、わたしが料理を作ろうとしたんですが、あいにくいい材料がないので、鶏小屋のおん鶏を捕まえようとすると、このおん鶏がとても強くて“ピンタン”とうちの人を蹴ったんですよ、それはいいんですが、その拍子に流産して、いまうちの人は産後なんです」 「奥さん、男がどうして産後で寝るんです、そんな大馬鹿なことがありますか」 「ハイ、ハイ、お兄さんたちこれで、おあいこですね、お二人とも“馬鹿な”と言ったんですから」 「ウ−ン、やられた」
こうして大兄と中兄は末弟持ちの料理を食べそこなった。
撫順市巻下 1997.6.29