馬鹿婿が祝いに行く

 昔、若くて賢い女房を娶った馬鹿婿がいた。ある年の五月、女房の弟が結婚することになったので女房は馬鹿婿にこう言った、「明日あたしの弟が結婚するから、あたしは今日出かけるが、お前は明日おいで。明日の朝は早く起きて、お前の犬のような手とロバ面の顔を洗い、貧乏な卑しい奴と人さまに笑われないように新しいスベスベの着物を着て、牛肉二斤とお金を入れた祝い袋を持っておいで」 「わかった、行っていいよ」 そこで女房は先に実家へ帰った。
 翌日、馬鹿婿は朝早く起きると犬の足を刷毛でこすり、ロバの顔を洗うと、箪笥の中の着物をひろげ、どれがスベスベするか一枚一枚、撫でてみたが手を洗ってないから手がザラザラしていてどれを触ってもスベスベ感じない、苛立っていると体に虱がいたので、お腹をつまむと、お腹の皮はスベスベしているではないか。あったこれだ。俺は裸で行こうと決め、牛肉二斤を持つと素裸で女房の実家へ祝いに出かけた。

 道の途中で馬鹿婿は大便がしたくなったので、持った肉を木の枝に懸けてしゃがんだ、すると、鷹が飛んで来て肉をくわえて行ってしまった。馬鹿婿は慌てて「オ−イ、その肉は女房の弟へやる肉だ、食べるんじゃない」と大声で叫んだが、聞えるはずもない、鷹が空高く飛んで行ってしまったので、馬鹿婿もしょうがなく歩きはじめた。

 馬鹿婿の女房は亭主に何かあってはいけないと、時間に見当をつけて途中まで迎えに来ると、なんと亭主はまる裸で手には何も持っていない、よく見ると顔も手も洗っていないので、怒りいきなり亭主のお尻を叩いてみたが、物の分からない馬鹿亭主だからしょがないと思い、亭主を高粱の畑に連れて行った。「馬鹿だね、なんで裸で来たの、みんなの笑い者になるじゃないか。ちょっとここで待っていな、あたしが食べる物を持って来てやる、そして夜になったら実家に連れて行くから」と言った。馬鹿婿は一言「うん」と言っただけだった。

 しばらくして女房は馬鹿婿に御飯を持って来た、馬鹿婿は喜んで食べおわると、横になって寝てしまった。夜になってから、女房は馬鹿婿を実家に連れて行き「お前、家の中に入るんじゃないよ、人に見られると恰好が悪いから、門の後に隠れ声を出しゃあいけない、明日の朝早く一緒に帰るからね」と言った。馬鹿婿は承知して門の後に立っていた。

 その晩、新婚の女房の弟が花嫁と仲良く抱き合い「お前はとても綺麗で、天女のようだね」囁いていた、それを門の後に隠れていた馬鹿婿が聞き、大声で「エエッ、嫁さんは天から来たのか、それなら、あの二斤の牛肉を見なかったかい」と言ったので、新婚の夫婦が「アッ」と頭を上げて見ると、姉の馬鹿婿が門の後に裸で立っていた。

 付記 
<看見我那件白布衫了?>(あたしの白い布を見ませんでしたか)はこれと同系の話である。その話は泥棒が白い布で鵝鳥を捕まえるが、鵝鳥は白い布を被ったまま空へ飛んで行ってしまった。泥棒がまた夜になってある家に盗みに入ると、新婚夫婦が「お前は天の玉の天女」 「あんたは天の金の童子」と抱き合って囁いていた。それを聞いた泥棒は天井の梁から飛び降り「お二人は天から来た金の童子と玉の天女ですか、それなら白い布を背負った鵝鳥を見ませんでしたか」と聞いたという話である。 

             撫順市巻下                                   1997.6.28

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