分家飯

 諺に“兄弟、仲よければ家乱れず、嫁、仲よければ家散らず”と言う。

 昔、一人の老父が三人の息子と暮らしていたが、息子たちが結婚してからは何時も嫁たちの間で争いが絶えず、みるみる家のなかがばらばらになってきたので、老父は一緒に暮らせないと思い、家を分けることにした。分家が決まり、別れの食事をすることにした。三人の嫁は老父の分の粉袋をはたき、雑穀の混じった粉をふるいだした。老父はそれを見て「それでうどんを打とう、どっちにしろ家族みんなで食べる最後の一食だ」と言った。

 やがてうどんができた。長男の嫁がお椀にうどんを盛り、夫にと持って行った。次男の嫁がそれを横目で見て、黙っていられずやはりお椀にうどん盛って持って行った。三男の嫁も二人の兄嫁を見て、あたしだってぼんやりしていられないと、笊でうどんを掬いお椀に盛った。

 長男の嫁が老父の分をとろうとしたが、もううどんはなく汁が少し残っているだけなので、小さなお椀に汁をいれ、老父に「年をとったから、固いもの食べては夜になってお腹が張るし、歯もあまりよくないから、うすく軟らかいものがいいですよ」と言って渡した。
 老父はこれを見ると、箸でお椀をたたきながら「暖衣飽食、子福者は妻あればこそだ。いまお前たちのおっかさんがいれば、わしのお椀のうどんはこんなにうすくはない筈だ」と言った。

            撫順市巻下                                      1997.6.5

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