三人の嫁
昔、老母と息子たち三人の嫁がいました。長男と次男の嫁は心のよくない嫁で、三男の嫁だけが優しい嫁でした。
さて、この二人の兄嫁たちは一緒になって弟嫁を苛めていました。毎朝、弟嫁を食事の支度に起こすと、二人はまた部屋へ戻って寝てしまい、支度ができる頃になってやっと起きて髪をすき顔を洗うと、台所に行って弟嫁に「あんた休んでいいよ、あとはあたしたちでやるから」と言って部屋へ追い返しました。
だから、何時も老母が起きて来ると兄嫁の二人が朝の支度をしているところだったのです。それに兄嫁たちは老母に「朝の支度をわたしたちがやっているのに弟嫁はまだ寝ているんですよ」と言っていました。
洗濯もそうです、兄嫁は老母に「お義母さん、わたしたちが洗濯をします」と洗濯物をとると、すぐ弟嫁にところへ持って行き、弟嫁が洗濯をして干しおわると、また兄嫁たちは弟嫁に「この洗濯物はしわがあるから、あたしたちが霧を吹いてのばす」と言って持って行き、洗濯物を叩いたり、踏んだり、のばしたりして畳んでから老母に渡すのでした。
こうして月日がたつと老母は“二人の兄嫁たちは親孝行のようだが口先だけのようだし、弟嫁は親不孝のようだが無口でしっかりしている”と思い、三人の嫁の誰が本当に親孝行なのか試してみようと一つの方法を考えだしました。
ある日、老母は床にふせり、何も食べず、何も飲まず、フウフウ言って、三人の嫁を呼びました、嫁たちは「お義母さん、どうしました、気分でも悪いのですか」とたずねると老母はただ頭をふるばかりで返事もしません。医者を呼んでも診せず、薬を煎じても飲みません、息子たちは驚いてどうしていいか分かりません、涙を流しながら「おっかさん、どうしたら、治るの」と聞くと、老母は「実はわたしゃ夢をみたんだよ、わたしの病は息子の嫁の肉を食べれば治るとね。でもどの嫁が体の肉を切ってくれるかね、少しあればいいんだ、その肉の“おすまし”を飲めば治るんだよ」と言いました。
息子たちは急いで自分たちの女房と相談しました。長男の女房と次男の女房はそれを聞くと「そんな馬鹿な、人の肉で治る病気が何処にあるの、これは不老不死のためにわたしたちの命をとるのよ、トゲがささるだけで半日痛いのに肉をえぐりとるなんて」と言いました。
ところで、三男の女房は夫の話を聞くと涙を流し、心のなかで“意地の悪い二人の嫂さんたちにはできっこない、でも老いた母に万一のことがあれば、わたしたち夫婦はこの家にいられないかも知れない”と考え、二人の嫂に「わたしの肉を切りますから、嫂さんたちはわたしの肉を煮て、お義母さんに上げてください」と言い、刀を手にとり何処を切ろうかと考えました。
腋の下は肉がない、頬の肉ではあとがみっともない、お尻の肉では義母に失礼だ、どうしよう、そして最後に歯をくいしばり目を閉じ、思い切って刀をふと腿に立てて肉をえぐりとりました、二人の兄嫁は急いで弟嫁を床へ上げると、肉を台所に持って行き、鍋にいれ水を注ぎ火にかけました、しばらくすると鍋が“コトコト”と音をたてはじめました、これを聞くと二人の兄嫁は「いい匂いがしてきた」と長男の嫁が汁を少しすくい「どんな味かするか嘗めてみよう」と言いました。
すると壁の上に貼ってあった“かまど神”が“こいつは弟嫁の肉の味見までするのか”と怒り、熱い湯のしぶきを長男の嫁の顔に吹きかけ、顔に火傷をさせました。次男の兄嫁があたしも味見をしょうと少し汁をすくって、嘗めようとしたとき、“かまど神”はまた口から熱い湯しぶきを吹き出し、次男の嫁の頭に火傷をさせました。
兄嫁たちは煮えた人肉の汁を老母のところに持って行きました。
老母はもともと病気ではないので、人肉の汁を飲むふりをして、すぐ治ったと言い、二人の兄嫁に「この肉は誰の肉だえ」と聞きました、長男の嫁は「わたしたち二人の肉です、弟嫁は災難を逃れて助かったとまだ寝ています」と答えました。老母は兄嫁たちに何処にも傷がないので「三男の嫁は」と聞くと、次男の嫁が「部屋の中にじっとして出て来ないのです」と答えました。
すると老母は壁にかかった棒を持って「わしが見に行く、お前たちもわしについておいで」と言い、三男の嫁の部屋へ行くと弟嫁は布団を被って寝ていました。「お前どうしたのだい」 「お義母さん何でもありません、少し寒気がするのです」 老母はかけた布団を棒ではねあげると、三男の嫁のふと腿からまだ血がしたたっているのを見て、涙を流し、目をこすりながら「あんたの肉の“おすまし”だったんだね、お前が本当の孝行者だ、二人の兄嫁たちには良心の一かけらもない」と言いおわったとたんに、長男の嫁の顔一面にあばたができ、次男の嫁の頭に大きないぼができました。
撫順市巻下 1997.6.4