みみずの餃子

 昔、若い夫婦がいた。妻は十八で息子を生んだが息子が三歳の時、夫は死んでしまった。それからの母一人子一人の暮らしは楽ではなかった。
 息子は十八九になると世話する人がいてあまり裕福ではない西村の王家の娘と結婚した、娘は嫁いで来ると間もなく元気な男の子を生み、母親は喜んで一日中孫の面倒をみた。息子はそれを見て、おっかさんは苦労して俺を育て、今また俺たちの子をみてくれるのは有難いことだと、何時もおっかさんには美味しいものを食べさせたいと思っていた。

 ある日、息子は女房に「今日はおっかさんの誕生日だ、肉一斤買って餃子を作ってやってくれ、この歳までおっかさんは俺たちのために苦労したんだから」と言った、女房が 「わかったわ、あんたも帰って来て食べる?}と聞くと息子は「俺は仕事があるから、何時帰れるか分からない」と言って出て行った。女房は肉を一斤買ったが“これじゃあ、おっかさんの分と子供が何個か食べたらおわりで、あたしの分がない”と、韮畑の隅に積んだ馬糞をひっくりかえし、指の太さほどのみみずを盆に一杯とると塩で揉み水で洗い、それで母親に食べさせる餃子を作り、肉のほうは子供と自分の食べる分にした。   

 「おや、肉一斤でこんなに餃子ができたのかい、息子にもとっておこう」 「とってありますから、おっかさん食べてください」 だが母親が食べてみると、どういうわけか口あたりも悪く美味しくない、母親は目がとうくて、みみずが見えず、息子が帰って来たら味をみて貰おうと、お椀に餃子をとって戸棚に入れておいた。

 夜になって息子が帰って来た、女房がすぐ「餃子、あんたにも残してあるわよ」と言うので「一斤の肉でそんなに餃子ができるのか」と食べてみると、本当に肉の餃子だ、「おっかさん、今日の餃子は美味しかったかい」 「美味しかったよ、餃子が美味しくないわけがない、美味しくなければ餃子じゃない、おっかさんの分をお前にも残しておいたよ」と、戸棚からあのまずい餃子を出して息子に食べさせた、息子は一口食べると、前に食べたのは美味しかったのにこれはまずい、「おかしい」とその餃子をくずしてみた、母親は「肉の餃子だよ、お前何するの」と言ったが、見ると中の具はみみずだった。

 「おっかさん、みんなと一緒に食べたのかい」 「いいや、嫁と孫はあとで食べたよ」  息子は黙ってその晩は床についたが、あれこれ反転して“おっかさんにみみずの餃子を食べさせるなんて、何事だ”と翌朝まで寝られずにいると、稲妻が光り雷が鳴って雨が降りだした、息子が薪をとりに起き、怖くなった女房が子供を義母の部屋へおいて庭に出ると、ピカッと雷が女房の上に落ち、女房は体が人で頭は豚の姿になった。息子が駆けつけ、「アッお前はどうしてそんな姿になったのだ」と言うと女房は何も言わず韮畑で四つん這いになり、口でみみずを掘りだして食べはじめた。
 それを見て息子は女房がおっかさんにみみずの餃子を食べさせたのだと分かり、天に背いた罪だと知った。

 心のねじれた者はたとえ人が報いずとも天はそれを許さないのだ。  

              撫順市巻下                                    1997.6.3

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