石 榴

 昔、壊れかかった茅葺きの小さな家に二人の兄弟が住んでいました。二人には父親が残してくれた一頭の年寄りの牛があるだけでした。
 ある日、兄が弟に「お前も大きくなったし俺たちは別れて暮らすことにしよう」と言いました、弟もこれと言う考えもないので承知しました。
 すると兄は「俺たちには別に金めの物もない、ただこの牛がいるだけだ、牛を半分にすることもできないから、俺たちのどっちに来るか牛に決めさせよう、俺が鼻輪を引っ張るからお前はしっぽを引っ張れ、それで牛が行った方のものにしよう」と言いました。弟は兄が牛を欲しがっているのは分かっていましたから“どっちかが損をするのはしょうがない、それなら兄に牛をやろう”と考えました。こうして、兄は喜んで牛をとり、弟は牛のしっぽにいた虻をとって、別れて暮らすことになりました。

 弟はその虻を可愛がり、虻もまたよく弟になつきました。
 ある日、弟は虻を連れて伯父の家へ行って、ちょっとのすきに可愛い虻を雄鶏に食べられてしまいました、弟が泣いて悲しがると、伯母は「泣かないでおくれ、お前にこの雄鶏をやるから」と謝りました。
 ところが何日もしないうちに、その雄鶏をまた近所のお爺さんの家の犬に食べられてしまいました、お爺さんは弟が何にもないのが分かると気の毒がってその犬をくれました。

 春が来てどの家でも牛に犂を牽かせ忙しく田畑を耕し種を蒔き始めたのに、牛のない弟はふさぎこむばかりでした、すると犬が「心配しないで、わたしがいますよ」と言って、犬は弟と一緒に畑に行って犂を牽き畑を耕しました、犬は牛が耕すより早く畑を耕しました。
 犬が犂を牽いて畑を耕した話はすぐ噂になって兄の耳に入ると、兄は牛を牽いて来て、むりやり弟の犬と交換し犬を自分の畑に連れて行きました、でも犬は畑の端にいるだけで少しも動きません、兄は怒って竹の鞭で犬をさんざんに叩き、とうとう殺してしまいました。

 弟は泣き泣き自分で土の墓を作って犬を埋め、その上に小さな石榴の木を植え、水や肥料をやったり、虫をとってやったりしました。しばらくすると赤い実がつぎつぎと木にいっぱいなり、弟は苦労したかいがあったと喜びました。すると一つの実が木から落ち、ゆっくり割れて綺麗な家に変わりました。弟は驚きこの実を貧乏な人に分け、みんないい家に住めるようにしてやろうと考えました。ところが、弟が実を摘まないうちに兄がこの実をみんな盗んで逃げてしまいました。

 兄は盗んで来た石榴の実を一つ割ると、中から一匹の虻が飛び出して鋭く顔を刺しました、二つ目の石榴を割ると雄鶏が跳び出して鋭く足をつっつきました、三つ目の石榴を割るとこんどは犬が跳び出して「ワンワンワン」と向かって来るので兄は驚いて気を失いました。やがて兄が気がつくと盗んで来た赤い石榴は一つもありませんでした。
 それから兄の耳には何時も「ワンワンワン」と鳴く犬の声がして一生安心して暮らすことができませんでした。

           中国幼児故事精選                                 1997.5.22

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