財 迷 石
蘇家屯区十里河の北に紅宝山という山がある、山の上に“財迷石”と呼ばれる大きな石があるが、この石にはこんな昔話が伝わっている。
昔むかし、ある地主が景色を眺めようと息子とこの山に登ると、途中で母鶏が雛を連れ草地で虫を啄んでいるのに出遇った。
息子は雛を見ると面白がり、つかまえようと追いかけて一羽の雛を踏み殺してしまった、息子は可哀相なことをしたと死んだ雛を手にとってみると、なんとそれは金貨になっていた。地主と息子は大喜び、また何羽かつかまえようとすると、母鶏が息子の小さな踵をつっつき、息子は転んでしまった。地主は息子が痛がるので、背中におぶい急いで家に帰り、鍼を打ち、薬をぬってやったが一月たっても治らず、あの金貨も使い果たし困っていた。
ある日、一人の占師が来たので、地主は息子の足の傷は何時よくなるかと卦を立てて貰った。占師は息子がどうして足を怪我したのかを聞くと「この傷を治すには金の神に救いを求めるしかない、だがそうしたあとは利己的な欲を起こしてはいけない。そうしなければ、傷は治るどころか、死ぬかもしれない」と告げた。地主はその金の神は何処にいるのかと聞くと、占師は「紅宝山の中」と答えた。
「あの大きな山の何処へ行けばいいのか」 「雨の降る日、続けて雷が四回鳴ったら、昼でも夜でもかまわず山に登り、また四回雷が鳴るのを待ち、はじめから八回目の雷が鳴り響くと山が裂け道が現れる、その道をたどってしばらくすると宮殿の前に出る、そうしたら中へ入らず、外から続けて三回『金の神、助けて下さい』と言えば、すぐ『何の用か』と尋ねられるから、ありのままを話す、そして、薬を貰ったら、すぐその場を離れる、急いで離れないとそこで死んでしまう、それを忘れないように」地主はそれを聞くとすぐ「その通りにする」と言って、占師に銀貨を渡して見送った。
それから地主は毎日雨の降る日を待った。やっと雨が降りだした夜、突然稲光りがしたかと思うと“ガラガラ”と四回雷が響いた。地主は蓑も被らずすぐ山へ駆け出した。もう少しで山の中腹へかかる時、また“ガラガラ”と四回雷が鳴り響き天地を揺るがす大音響がして、山が裂け一筋の道が現れた。地主は驚いたが心を静め、石をぬうようにして前へ進んだ。
しばらく行くと前が金色に輝いている、見れば金の洞窟である、洞窟の両脇には金の童子が立っている、洞窟を更に進むと金で作った宮殿が見えた。地主は占師に言われた通りにすると、宮殿の中から巫女の声で「何の用か」と言う、地主がわけを話すと、また巫女の声、「それは天意だ、お前が起こした欲の報いだ、金の神はお前の息子の傷を治してくれるが、再び欲を起こせば、息子の命は保証されない、いいか」地主はこれからは決して貪欲な心を起こさないと誓うと巫女は地主に薬を授けてくれた。
地主は薬を授かると、今来た道をとって返した。地主は洞窟を出ると、両脇に立つ金の童子が欲しくなり、盗んで帰ろうと思い、さんざん考えた末、周りに人がいないのを見ると金の童子を抱えた、とたんに足が滑って倒れ、地主は金の童子の下敷きになってしまった。
命がけで押し上げるが動かない、それでも押し上げていると、突然大音響が轟き、裂けた山がしまり始めた、地主は急いで外に出ようとしたが、山の裂け目に頭が挾まって貪欲な地主は死んでしまい、裂け目からはみでた頭はそのまま石になってしまった。
地主の息子も傷の痛みが激しくなり死んだ。後に人々はこの石を“戝迷石”と呼ぶようになった。
沈陽市巻上 1997,5.17