金牛星下界に下る
昔、この世にまだ牛がいなくて、人は畑を耕す犂を老婆も子供も一家総出で牽いた、だが、うまく耕せず穀類の収穫も少なく人々の生活は苦しかった。
さて、杏や梨の花が満開の頃、天上界の太白金星が下界の様子を見に下った。そこで太白金星は爺、婆、女房、娘たちがみんな肩に牽き縄をつけ、主の男が畑を耕す犂を「ヘイヨ−、ヘイヨ−」と声を上げ、一歩一歩と前へ牽く姿を見た。耕される畝は浅く不揃いで、ひと畝耕すと休み、ゼイゼイと息をつき、続けて「ヘイヨ−、ヘイヨ−」と声を上げられなかった。
この様子を見た太白金星は天上に戻り玉帝に奏上すると、玉帝は金牛星を牛に変えて下界に下し、人のために畑をならし、車を曵かせるきつい仕事をさせることにした。
金牛星が牛になって下界に下り、畑を耕すようになると、畝は深く真っ直ぐに耕せ、土は軟らかくなって秋は豊作になった。こうして牛は苦労して農民の畑を耕し、よい穀類の収穫を増やした。だがそれとは逆に牛の食べ物はよくなかった。牛は天上界から来たから肉などの生臭さは食べず、草ばかり食べて、水も溜まり水、洗い水、濁り水を飲んで綺麗な水は飲まないし、ロバや馬のように怒って後ろ足を蹴上げることもなく、つらい仕事にも耐え恨みごとを言うこともなかった。
アッという間に十年が過ぎて、また太白金星が下界に下って来た。牛は太白金星に「金牛星の俺を人は牛として畑を耕させた、それで俺は人に金儲けもさせたし、たくさんの作物も手にさせた、もうこれで俺は天上界へ帰てもいいのではないか」と言った。
太白金星は金牛星も確かに疲れているが、牛がいなければ人はまた苦労しなければならないと考え「お前はまだ下界にいた方がいい、きっと楽になる日が来るから」と答えると、牛は「それは何時だ」と言った。「こうしよう、何時か下界に灯がともる時がきたら働かなくてもいいことにしよう」 「俺が働かないで誰が代わりになるのだ」 「その時わしが代わりに鉄の牛を作る、鉄の牛は疲れも苦労も知らずに人の畑を耕してくれる」
金牛星の牛は“鉄の牛が本当に牛になれるのか、それは無理だ、それより俺はこの世に灯がともるのを待とう、その日が来れば俺は天上界に帰れるのだ”と考えた。
しかし、太白金星はどう考えたかというと“何時かは下界に油の灯か蝋燭の灯がつく、そうなったら、その時また考えればいい”と思ったのである。
こうして牛はまたずっとこの世で人のために苦しむことになったわけである。
撫順市巻上 1997.5.12