足長バッタの話
昔、犬のような大きなバッタがいました。二本の後足は爪がとがって長さは三尺もありました。
ある日、この足長バッタは町から帰る途中に夜になったので、一軒の小さな家に泊めてくれと頼みました。戸を開けて出て来たお爺さんは、わしの家は小さくておまけに子供が多いから足の長いバッタは泊められないと断りました。
足長バッタは意地悪だなと思いましたが、ほかに家も見当たらないので、じっと我慢して「手が見えないほど暗くなって、道も歩けず本当に困っています、なんとかひと晩泊めてください」と哀れぽっくまた頼みました。でも、お爺さんは「お前さんの足がそんなに長くては、わしの子の頭が蹴とばされる」と家の中に入れてくれません。足長バッタは「わたしがお爺さんの子の頭を蹴とばしたら弁償しますから」と無理やりに泊めてくれと頼みこみました。お爺さんは仕方なく足長バッタに何度も足を縮めて寝るように言いつけて泊めることにしました。足長バッタは足を縮めて泊めてもらいました。
ところが真夜中になって、山の中の一頭のノロが大声で何か叫けんだものですから、足長バッタはびっくり、思いっきり足を蹴って飛び起き、お爺さんの子を床の下に蹴落としてしまいました。子供の頭は足長バッタのするどい爪に蹴とばされ、もう少しで死ぬところでした。お爺さんは怒って足長バッタのせいだと怒鳴りました。足長バッタは目をギョロリとさせて、ずるい考えをおこし「お爺さん、怒らないでください、これはわたしが悪いんじゃない」と言いました、「お前が悪くなくて誰が悪いんだ、お前が蹴っとばさないでわしの子が怪我するものか」とお爺さんが言うと足長バッタは「子供を蹴っとばしたのは確かにわたしですが、わたしはノロの声に驚いて足を伸ばしたんです、もしノロが叫ばなかったら、わたしは足を伸ばさなかったし、お爺さんの子供も蹴とばさずに済んだのです」と言い訳しました。
爺さんは足長バッタの言うとうりだと思い、こう言いました「じゃあ、誰のせいだと言うんだね」足長バッタは「もちろんノロのせいです、わたしがお爺さんと一緒に行って、ノロに責任をとらせます」と言いました。お爺さんは足長バッタの言葉を頼りにして一緒にノロの家に行くと、足長バッタはノロに「お前、なんだって夜中に大声をだしたんだ、その声で俺は驚いて縮めていた足を伸ばし、このお爺さんの子の頭に怪我させてしまった、これはお前の責任だ」と文句を言いました。
ノロは頭をふって 「それはわたしのせいじゃあありません、わたしがいい気持ちで寝ていたら、大きな木が突然倒れたからわたしは驚いて大声をだしたんです、あの木のせいです、あの木が倒れなかったら、わたしは叫びませんでした」と言いました。
お爺さんはノロの話ももっともだと思い、足長バッタと一緒に倒れた木のところへ行き文句を言いました、木はお爺さんと足長バッタの話を聞くと、溜め息をついて「お前さんたち、わしが自分で倒れたと思っているのかね、わしはあの白蟻に虫喰いの穴を空けられて倒れたんだ、もし責任を言うならあの白蟻だ、あいつらがわしを喰い荒らさなかったら、わしは絶対枯れやしないし、倒れやしなかったのだ」と言いました。
お爺さんは倒れた木の言うのも本当だと思い、また足長バッタと一緒に倒れた木に巣を作った白蟻に文句を言いました。白蟻はお爺さんの今までの話を聞きおわると、ベラベラ話し始め「これはわたしたちのせいじゃない、それを言うならあの牛にせいだ、牛がわたしたちの巣を踏み荒らしたんだ、わたしたちは牛に追われて仕方なくあの木の穴にもぐったんだ」と言った。お爺さんは白蟻の話も本当だと思い、また足長バッタと一緒に牛を探しますと、村はずれで縄に繋がれた牛に出会いました。
お爺さんは今までのことを牛に聞かせると、牛は怒って「それがどうして俺のせいになるのだ、俺の鼻に通された荒縄が見えないのか、俺は縄に繋がれてあそこにおとなしく立っていただけだ、文句を言うならこの縄に言え、縄に繋がれなければ、俺は蟻の巣を踏みつけたりはしなかたんだ」と言いました。お爺さんは牛の話は全く道理にかなっていると思い、すぐ縄を掴んでお前のせいだと言いました。縄は「アア、ア、それはわたしのせいじゃありません、わたしは鼠にかじられるのが怖いから牛に繋がっていたんです、せめられるのは鼠です、鼠がいなければわたしは家に中で横になってゆっくり寝ていたんです、なにも願って牛に繋がれていたわけではありません」と言いました。
お爺さんは心からの縄の話を聞いて、足長バッタと一緒にこんどは鼠のところへ行きました。二人が大きな鼠のすみかに行くと、一匹の大きな黒い鼠の王さまがいました、お爺さんと足長バッタが今までのことを初めから話し「ことの起こりはみんなあんたたちが縄をかじるから起こったのだ、すべてに責任はあんたたちにある」と言いました。鼠の王さまは髭をふるわせて「これは猫のせいだ、あんたは人違いをしている、猫がわしらを追いかけるから、わしらは食べる物が探せず、お腹が空いて縄をかじるのだ、もし猫が優しければ、わしらはまずい縄をかじったりするものか」と言いました。
お爺さんは鼠の王さまの言うことももっともだと思い、猫に文句を言うことに決めました。すると足長バッタはお爺さんに「お爺さん、猫はあんたたち人間が飼っているのだから、お爺さん一人で行ってくださいよ、わたしはもうお爺さんと半日も一緒に歩いたから帰ります、そうしないと夜になって、またすしづめのお爺さんの家に泊まることになるから」と言いました。お爺さんは足長バッタの言うのも道理があると思い、足長バッタを帰し、一人で猫のところへフウフウ言いながら行って猫に文句を言いました。
猫はニャアニャア三回鳴くと「お爺さんたら馬鹿だね、わたしが鼠を捕らなければ、お爺さんの家の食べ物がみんな鼠に食べられてしまうよ、そうしたらお爺さんと子供たちは何を食べるの」と聞きました。お爺さんは猫の言うことは全くそのとうりだ、鼠に家の食べる物をみんな食べられたら、一家の者はみんな飢え死にしてしまうと思いました。
そこでやっとお爺さんは何処にも文句を言うところがないのに気がつきました。
西双版納哈尼族民間故事集成 1996・11・27