蛙と虎

 ある日の夕方、小さな一匹の蛙が蟻を食べていました。蛙はお腹が空いていて蟻を捕まえては食べ、捕まえては食べ、お日さまが山の影に落ちるのも知らずに食べていました。真っ暗になってやっと蛙はピョンピョン跳ねながら家へ帰ることにしました。
 ところが暗くて道がよく見えないものですから、深くて大きな穴に落ちてしまい、いくら跳ねても出られません。
つぎの日、虎がこの穴のそばを通りかかりました、蛙は急いで虎に大声で言いました「虎さん、あんたどうしてまだ地面にいるの」 「蛙さん、何かあったのかね、すっかり明るくなったのに、まだ穴のなかにいるなんて」 「だって虎さん、みんなは天が落ちると言って、穴のなかに隠れていますよ、虎さんも入りなさいよ」とせわしげに言いました。虎が空を見ると雲が飛び霧が流れ、本当に天が落ちて来るようです、虎は驚いて “ト−ン”と穴のなかに飛びおりました。

 こうして、蛙と虎は一緒に穴のなかで二日過ごしました、でも天は落ちてきません。虎は蛙に「どうやら、天は落ちてこないらしいな、俺たちも穴から出ようよ」と言いました、「虎さん、待ったほうがいい」と蛙はわざと心配そうな顔をして「出ると、ちょうど天が落ちてくるかもしれない」と言いました。蛙と虎はまた一日穴のなかにじっとしていました、でもやっぱり天は落ちてきません。虎はもう我慢できず「蛙さん、俺は天は落ちてこないと思うよ、俺はもう腹ぺこだ、穴からでて何か食べよう」と言いました。

 蛙ははじめから虎のしっぽにつかまって穴から出ようと考えていたのですから、うなずいて「うん、俺も腹が空いた、それじゃあ、虎さん先に出なよ」と言いました、虎は「蛙さん、出してあげようか」と聞きましたが、蛙は「いいよ、いいよ、虎さんが出れば俺も出るから」と笑って言いました。虎は「じゃあ、先に行くよ」と言うと、からだを一度伏せてから一気に跳び上がりました。その時、蛙は素早く虎のしっぽにつかまり、虎と一緒に穴から跳び出し、草の上に落ちると“フ−、フ−”と声をだしました。

 虎が不思議がって「蛙さん、どうやって出たの」と聞くと、蛙は「虎さんが跳び上がった時、俺も跳び上がったから、あんたが穴から出た時、俺も穴から出たのさ」と笑って言いました。
 虎は口にはだしませんでしたが、心のなかで蛙のやつ何かずるしたなと思い、草地に来た時、蛙はどんな力を持っているのか試してやれと思いました。それで虎は蛙に「蛙さん、火は怖くない」と聞きました、蛙は「怖くない、怖くない」と答え「なんならあんたと俺とで、どっちが火に強いか比べてもいいよ」と笑いました。
 「じゃあ、こうしよう、お前さんが火が怖くないならこの茅の草地に入り、俺が火をつける、そしてお前さんはどうなるか」と言いました。すると蛙は笑いながら茅の草地のなかに穴を見つけて入り、虎が火をつけて茅を焼いしまうと、穴から這い出し虎の前に出て来ました。

「虎さん、今度は俺が火をつける番だ、虎さん、あの茅の草地に入ってくれ、あんたが火を恐れないかどうか試してみるよ」虎は茅の草地に入ったらすぐ、草むらにもぐりこんで、蛙のつけた火をさけようと考えていました、ところが火は燃えながら虎を追いかけて来ます、虎は命がけで前に逃げましたが、火はボウボウと迫って来ます、するとこの時、牛がやって来ました、虎は大声で「牛さん、助けてくれ、火が俺を焼いてしまう」と叫ぶと、牛は「早く積んだ干し草のなかにもぐれ」と怒鳴りました、牛は何時か子牛を食べられて虎を恨んでいたのです。

 虎はよく考えもせず、積まれた干し草のなかにもぐりました、火は猛然と干し草の山を燃し尽くし、虎のからだにもつきました、虎が命がけで逃げて行くと、泥沼のなかに水牛がいました、虎はまた大声で「水牛のお爺さん、助けてくれ、俺は火で焼かれてしまう」と叫びました。心の優しい水牛は火だるまになった虎を見て可哀相になりすぐ 「早くわしの泥沼のなかにころがれ」と大声で教えました。虎は夢中になって泥沼に入りゴロゴロところがりやっとからだの火を消しました。
 こうして虎のからだには黒い焼けどのあとと、臭い嫌な匂いが残ったのです。  

            西双版納哈尼族民間故事集成                         1996・11・18

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