醜い男だて
ガマ蛙はこれより醜いものはないというくらい醜い。しかし、愛尼人はこの比べようもない醜いガマ蛙を非常に有難がる、田圃でガマ蛙を見つけても苛めたりはしない、それどころか親しみを込めて男だてと褒め称える、何故だろう。
伝説によれば昔、ふた親に早く死なれた姉と弟が互いに助け合って暮らしていた。
ある日、姉と弟は一緒に山の仕事を終えて帰ろうとすると、木の下で一頭のノロが木の実を拾って食べている、二人が立ち止まって見ていると、ノロは驚いて逃げて行った、弟はだんだん見えなくなるノロを見ながら姉に「あいつを捕まえられるといいなあ」と言った、姉は優しく「明日、木の下に落とし穴を掘って、穴の中に罠を仕掛ければ捕まえられるよ」と言った。
翌日早く、姉は鋤を担ぎ、弟は罠を持って昨日のあの木の下に罠を仕掛けに行った。木の下に着くと弟は木に登り枝の上に罠を仕掛けようとした、姉はノロは木に登れないから木の下に罠を仕掛けるように言ったが、弟はノロは地面に落ちた実を食べてしまえば枝の実を食べに木に登ると頑固に言い張って譲らず、木の上に罠を仕掛けた。
姉はちょうどいい地面を選んで落とし穴を掘り、枯れ枝や落ち葉を穴の上にかぶせ、周りに木の実を撒いておいた。こうして姉と弟は家へ帰った。
三日目、鶏が三回鳴いて夜明けを知らせると、姉と弟は一緒に罠と落とし穴を見に行ったが、弟のかけた罠は木の上にかかったまま、姉の掘った落とし穴も何の音もしていない。
四日目、鶏が二回鳴いて夜明けを知らせた。姉と弟はまた一緒に木の下に行ってみたが、罠にも落とし穴にもノロはかかっていなかった、姉と弟はがっかりして家へ帰った。
五日目、鶏がまだ鳴かないうちに弟は一人でそっと木の下へ行ってみた、すると姉の掘った落とし穴にノロが落ちて死んでいた。弟は急いで落とし穴で死んでいるノロを引き上げ、藤つるでしっかり縛り、そのあとで枯れ枝や落ち葉と木の実を抱えて来ると落とし穴をもとどうりにしておいた。
そしてノロを担いで木に登り、姉が寝ているうちにノロを木の上にかけた自分の罠につけておこうとした。こうすれば姉が何と言おうと、俺にはかなわず、狩りは男の仕事だとわかる……と喜んでいると、「早く下りなさい」と言う声、弟はびっくり、あやふく落ちそうになって下を見ると姉が立っている、弟はすぐ気を取り直すと、何でもないふりをして「下りる、下りる、俺が捕まえたこのノロが重いんだ、これで二か月は食べていける」と言った。
姉はそれを聞くと怒って「あたしの落とし穴にかかったノロを木の上へ担ぎ上げたのね」と言うと、弟も負けずに木の上の罠にかかったのだと言い張った。姉は「ノロは木に登れないのだから、高い木の枝の罠にかかるわけないわ」と弟を責めたが、弟も譲らず互いに顔を赤くして争った。しまいに姉が「みんなに裁いてもらおう」と言うと、弟は早速、山をかけずり回り、川辺のガマ蛙と亀を除いたほかの動物たちに自分に賛成してくれるように頼んだ。そこで姉はガマ蛙と亀にしか自分に賛成してくれるように頼めなかった。
翌日、弟が頼んだ客がつぎつぎと集まった、弟は豚を料理し、酒を出してみんなをもてなした。だが、二日二晩たっても姉の頼んだガマ蛙と亀は来ない。
三日目の夕方、やっとガマ蛙と亀がのろのろやって来た。ほかの動物たちはそれを見て、てんでにガマ蛙と亀に文句を言ったが、ガマ蛙は返事もせずに亀の来るのを待ってみんなの中に入ると、ゆっくりと「わしが家を出ると、途中で雄牛が子供を産んでいたんだ、あんまり珍しいので、わしはそこで一日見ていたんだ」と言った。
それを聞いたみんなは出鱈目言うなとガヤガヤ騒ぎだした、騒ぎがおさまると、ガマ蛙は続けて「二日目に道を急いでいると、魚がみんな川辺の梨の木に登って梨を食べているんだ、あんまり不思議なのでわしはまるまる一日それを見ていたんだ」と言った。
みんなはまた騒ぎだしたが、ガマ蛙はそれにかまわず 「三日目に砂浜に通りかかると、砂浜がもうもうと燃えているんだ、砂浜が燃えるなんてめったにないことだから、またそこに一日いて、今やっとここに着いたのだ、みんな勘弁してくれ」と言った。
しかし、誰もガマ蛙の話を信用せず、みんなはガマ蛙に「証拠を出せ」と言った。ガマ蛙は「ハハハ」と笑い「よし、あんたたちは雄牛が子を産み、魚が木に登り、砂浜が燃えたのを信じないんだな、それならノロが木に登って木の実を食べ、高い木の枝にかけた罠にかかったと言うのを信じるのかね」と言った。
みんなはそれを聞いて何も言えず、しばらく考えてから賛成の拍手をした。姉が勝ったのである。弟は羞かしそうに下を向いてしまった。
こうしてガマ蛙は愛尼人から尊敬を受けるようになったのである。
西双版納哈尼族民間故事集成 1996・11・16