蛙の裁き
母牛が子牛を産みました。母牛は喜んで子牛の体についた血を綺麗に舐めてやり、片時も離れず子牛を大事に守りました。
子牛が動けるようになると泉に連れて行き、水を飲ませたり、草地に行って草を食べさせたりしました。ある日、一頭の雄牛が来て、子牛は俺のものだと連れて行こうとしました、母牛が怒って喧嘩になりました。
母牛は山の動物たちの王様に決着をつけて貰うことにしました。象の王様、水牛の王様、熊の王様、鹿の王様、虎の王様、ノロの王様、猿の王様……いろいろな動物の王様がやって来ました。けれども王様たちは、気の荒い雄牛を恐れ、子牛は母牛が産んだとはっきり分かっていても、正しいことを言い出せず、ワイワイ言うだけで決着がつきません。
そこで母牛は山で名声のある蛙に頼むことにしました。
蛙はピョンピョン跳ねながらみんなのいる所へ来ると、暖かい火のそばにより、目を閉じて居眠りを始めました。雄牛は蛙も俺を恐れているのだと思い、わざと子牛に近ずいて優しそうに体を舐めてやり、しばらくして蛙に向かい「お前、来たら何とか言えよ」と言いました。
すると蛙は目を半分開けて、ゆっくりと寝ぼけたように「ゆうべ、俺の親爺が子供を産み、俺は忙しくて眠っていないから、眠り虫が目の中へ入り込んでいるのだ」と言いました。
それを聞くと雄牛は「雄の蛙が子を産むなんて聞いたことがない」と怒って言いました、すると蛙はパッチリ目を開けて「そうだ、俺の親爺は子を産めない、つまり雄牛のお前も子牛を産めないわけだ」と言いました。そう言われた雄牛がポカンとしているうちに、母牛は喜んで子牛を草地に連れて行ってしまいました。
西双版納哈尼族民間故事集成 1996・11・14