コオロギと二羽の雄鶏
花雄鶏と紅雄鶏がいた。二羽の雄鶏は秋になりコオロギの声を聞くと、そこへ行ってコオロギが出て来るのを待ち、コオロギが出て来るとひと口で食べてしまう。
二匹のコオロギは「このままでは俺たちの子や孫まで、あいつらに食われ俺たち家族は生きていけない。俺たちをこんな酷い目にあわす雄鶏どもは許せない、なんとかしょうではないか」 「そうだ、明日あいつらと戦い、俺たちの力を思い知らせてやろう」と相談した。
翌日、コオロギが塀の下で鳴くと二羽の雄鶏は、うずうずしてすぐ走って来た。すると二匹のコオロギは長い後脚を蹴って花雄鶏のトサカに飛び上がった、紅雄鶏がそれを見て花雄鶏のトサカの上のコオロギを鋭く突っ突いた、するとコオロギは素早く飛び下りたので、紅雄鶏は花雄鶏のトサカを突いてしまい花雄鶏のトサカから血が流れた。
花雄鶏は血を流しながら、かまわずコオロギを追うと、つぎに二匹のコオロギは紅雄鶏のトサカに飛び上がった、花雄鶏は紅雄鶏のトサカの上のコオロギめがけ「このチビ、よくもさっきは仲間を騙して俺を怪我させたな、こんどは俺が食べてやる」と突き刺した。
ところが素早くコオロギは逃げたので、花雄鶏は紅雄鶏のトサカを突いてしまい、紅雄鶏のトサカからも血が流れた。
こうして賢いコオロギは花雄鶏のトサカと紅雄鶏のトサカの間を行ったり来りして、二匹の雄鶏同士で互いに突っ突かせ、それを夜まで続け、最後には二羽の雄鶏たちはトサカから顔まで血だらけになり、羽までむしりあってしまった。コオロギはしてやったりと喜び、もうこのへんでいいだろうと、身をかわし塀の角の隙間にもぐり込み「チィチィチィチィ」ト鳴き、花雄鶏と紅雄鶏を嘲笑い、コオロギ家族の気を晴らした。
四老人故事集 1996・10・2