馬鹿な亭主の商売

 女房が馬鹿な亭主に「商売に行っておいで」と金を渡した。

 それで馬鹿な亭主は生きた川蟹を仕入れたが、荷を両肩に交互に担ぐことを知らず、市場に行くまでにすっかり疲れ、川辺の柳の下でひと休みして寝込んでしまった。
 目が覚めてみると蟹はみんな川の中へ逃げてしまって一匹もいない、馬鹿な亭主は空の籠を担いで家へ帰り、女房に聞かれると「みんな逃げてしまった」と答えた。女房は「馬鹿だねえ、籠の上にどうして押しをのせておかなかったのさ」と言うと馬鹿な亭主は「早く言ってくれれば俺だって分かったのに」と言うと、女房は「しょうがない、もう一度実家から金を借りてやるから、卵を仕入れて商売しな、遊ぶんじゃないよ」と言った。

 馬鹿な亭主は七八十斤の卵を仕入れてまたあの川辺まで来ると眠くなった。
 蟹の時は籠に押しをのせておかなかったから逃げられたのだ、今度はしっかり押しをのせておこうと大きな石を二つのせておいてひと眠りした。

 さて、目が覚めてみると籠の中の卵は潰れて外にしみだしていた。「今度も元手をなくしてしまった、泣くに泣けない、どうすりゃいいんだ」と石をのせたまま籠を担いで家へ帰った。
 女房が「お前さん、なんで大きな石を二つも担いで来たのさ」と聞くと、馬鹿な亭主は「お前が石をのせて押しにしろと言ったから、押しにしたんだ」 「このうすのろ、蟹の籠に押しをのせろと言ったから卵の籠にも石の押しをのせたのかい、馬鹿だねえ」と言ったとさ。

            四老人故事集                                    1996・10・1

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