雀の恩返し
貧乏な少年が毎日物乞いをして母と暮らしていた。
今日もまた物乞いに歩いていると、少年の着物の袖に雀が飛び込んで来た、少年は雀を捕まえ家に帰り籠に入れると、雀はとても上手に歌を歌った。そこで少年は雀を籠に入れて町角に行き、雀に歌わせて稼ぎ、儲けたお金でいろいろな物を買い母親に楽をさせた。
雀は人の集まる町へ行くと「チィチィ、パッパ」と歌を歌うものだから珍しがられ、いいお金になりそのお金でいろいろな物を買い、少年と母親はもう鍋でジュ−と煮ない物は食べないでもすみ、何時も美味しい物を食べるようになった。
ある日、少年が何時ものように市場へ雀の籠を提げて行くと、市場に蒙古人が来た。この人は東北へ十何年も稼ぎに行って帰って来たばかりで、少年と雀の籠を見ると「お前さん、何をするんだね」と聞いた、「この雀に歌を歌わせて、お金を貰っています」 「雀に歌が歌えるのかね」 「ええ、歌えます」 「じゃあ、歌わせてくれ」 「雀や、この蒙古の人に歌を聞かせてやっておくれ」と少年が言うと、雀は「チィチィ、パッパ」と歌い出した。
「この雀を売ってくれ」 「売りません」 「売ってくれ、わしの家で歌わせたいのだ、幾らなら売るのだ」 「売りません、売るとしても、お母さんに聞かなきゃあ」 「それなら、わしはここで待っているから、急いで聞いて来てくれ」そこで少年は雀の籠を提げて家へ走った。少年は戻って来ると「お母さんは『この雀のお蔭で食べているのだから、誰かがこの雀を欲しいと言うなら、わしら母子が生涯食べられるだけのお金をくれれば売ってもいい』と言うんだ」と言った。
この蒙古人はちょうどこの時、稼いだ銀貨を何枚も持っていたので「ええい、やってしまえ、家へ帰れば金はあるんだ、これくらいの銀貨、どうってことはない、それよりこの雀を買って、みんなに雀の歌を聞かせてやれば面白い……じゃあ俺の稼ぎをみんなやろう」と風呂敷をほどいて持っていた銀貨をみんな少年に渡した、少年は汗ににじんだ上着を脱ぎ、貰った銀貨を包んで家へ帰った。
そして蒙古人も雀の籠を持って家へ帰った。夜になると、蒙古人は何年振りかに帰って来たので家には人々が大勢集まった。蒙古人はみんなの前に雀を出して「雀や、歌っておくれ、みんなに歌を聞かせておくれ、この何年かのわしの稼ぎの全部で買った雀だ、さあ雀、歌っておくれ、みんなに歌を聞かせておくれ」と言ったが、雀は歌わず、お尻を振って糞をした。
「雀、歌え、みんなに聞かせろ、わしの稼ぎをみんな使ったんだぞ」でも雀は歌わない、とうとう蒙古人は怒って雀を掴み“バシッ”と投げつけた。それから、蒙古人は料理人に「この雀の奴、歌えと言うのに歌わないから明日の朝、炒めてくれ、それを肴にわしは酒を飲んでやる」と言った。
料理人は、明日まで何処にしまっておこう、猫に食べられてはいけないと、素焼きの深い皿をかぶせようとすると、雀が息を吹き返して 「料理人さん」と呼んだ、「アッ、なんだ」と料理人がびっくりしていると、雀は「わたしを放して下さい、鳩小屋の鳩を炒めて蒙古人の酒のつまみにして、わたしを助けて下さい」と言った、驚いた料理人は「よし、逃げろ」と雀を放してやった。雀はバタバタと関帝廟へ飛んで行き、関帝像の頭の後ろの穴からお腹の中にもぐり込んだ。
翌朝、料理人は鳩小屋の鳩を捕まえて炒め、蒙古人に出した、何も知らない蒙古人は酒を飲み、鳩の肉を食べ「この雀はとても美味しい」と言い、“わしが大金をはたいて買った雀の肉だ、まずいわけはない”と考えながら酒を飲んだ。
さて、同じ朝、廟では雀が関帝像の腹の中から「和尚」と廟の和尚を呼んだ、「なんですか」 「西村の蒙古人を呼んで来い」と言った、和尚は“関帝様が話をされた、早くしなければ”と慌て、大急ぎで蒙古人の家へ行った。「あなたが東北から帰った方ですか」 「そうです」 「関帝様があなたをお呼びです、急いで来て下さい」
蒙古人は関帝様と聞いてすぐ廟へ行った。
蒙古人は関帝の前にひざまずいて「関帝様、何か御用ですか」と聞いた、「用と言うのはほかでもない、お前の家の料理人だが、一日中食事を作ってよく働くではないか、畑を十ム−やれ」 「はい」 「それからお前の上の娘を嫁にやれ」 「はい」 「必ずそうしろよ」 「はい」 「それに雄牛もやれ」 「はい」 「ロバも買ってやれ」 「はい」
蒙古人は叩頭の礼を捧げて家へ帰った。
家へ帰った蒙古人は「ウ−ン、仕方がない……」と言って、料理人に十ム−の畑をやり娘を料理人の嫁にやり、雄牛をやり、ロバも買ってやった。雀の恩返しでそれから料理人は思いどおりの暮らしをした。
四老人故事集 1996・9・29