狐の精と欲張り李
昔、ある村に欲張り李と言われている金持ちがいた。
欲張り李は山のように穀物を積み豚羊牛を、囲い一杯に飼っていてもまだ不満で、何処かの金の山でもなければ満足しそうもない。
ある年の冬、欲張り李は借金取りに出かけ、墓場の前を通ると、土饅頭のそばにじっとうずくまって動かない毛のふさふさした狐を見つけた。欲張り李はこれこそ天の恵み、金儲けできると嬉しくなった、見れば皮の色もいい、これを剥がして売れば少なくても百数十吊の金になると、腰をかがめて狐を抱き上げると、プ−ンと酒の匂いが鼻をついた、オ−、こりゃ生きてると驚いたが、待てよ。酒を飲む狐とはただの狐ではない、この狐はきっと人に化けて酒を飲み、酔っ払ってここに寝込み、狐の正体を現してしまったのだと目を丸くして一計を案じ素早く腰の紐を解き、それでしっかり狐の四つ足を縛り、地面に転がして刀を狐の頭に突きつけ狐が目を覚ますのを待った。
しばらくして狐は酔いから覚めるとたちまち綺麗な女房の姿に変わったが手足を縛られている、狐は直ぐ一切の事情が分かり欲張り李に助けてくれと言った、欲張り李は自分が捕まえた狐だから嬉しくて仕方がないのだが、きつい顔をして「放してやるのはわけはないが、わしの言う事を聞いてからだ」 「どんな事か言って下さい」 「お前が生きて帰りたいなら難しい事ではない、明日の昼、わしに銅銭一駄持って来い」 「それはわけありません、明日お昼、ここで待っていてくれればきっと銅銭一駄持って来ます」 「もしお前が嘘をついたらどうする」 「もしわたしが明日銅銭を持って来なかったら、雷神の罰に賭けます」 欲張り李は万事に通じ、早くから妖怪や妖精は雷神の罰をいちばん恐れると聞いていたから、狐が雷神に賭けて誓うと言うので安心して狐を放してやった。
その晩、欲張り李は嬉しくて眠れず、目をつぶると黄色に澄んだ一駄の銅銭が頭に浮かび、寝床で右に左に寝返って夜の明けるのを待ちわび、まだ暗いうちに起きると、飯も食べずに早々と墓場に出かけた。欲張り李は右を見たり左を見たりして首の筋がだるくなってしまったが、まだ狐の姿は見えない。
やっと昼ごろになって土饅頭の東の方からロバの鳴き声が聞こえると欲張り李は嬉しくなり、駆け出して行くと一頭のロバが東の方からやって来た。ロバは背中に細い棒をつけ、棒の両端には銅銭が一枚ずつ刺してあり、一駄の荷のようにしてあるが、どう見てもロバには二枚の銅銭しかない、カッとなった欲張り李は「狐め、俺を馬鹿にしやがって死んでしまえ、俺は一駄の銅銭と言ったのだ、それをたった二枚で一駄などと騙しやがって、こんどお前を捕まえたらきっと皮を剥いで肉をひっぱり出してやる」と罵りながら、欲張り李はますます怒って、ロバを牽いて帰ってやろうとロバに近寄ると、ロバは人が来たと猛然と跳びはね、後脚で欲張り李の胸を蹴り上げた。
欲張り李は「クソ−」と叫んだが、地面に叩きつけられ起き上がれず人に担がれて家へ帰ると寝込んでしまった。欲張り李は思えば思うほど癪にさわり騙された自分が馬鹿だったと自分を恨んだ。金は取れないし、ロバには酷く蹴られるし、怒りと恨みが重なり、欲張り李は何日もしないで死んでしまったとさ。
譚振山故事選 1996・9・11