恩知らずの約才  

 お前さん、首のところに白い筋のある牛を見たことがあるかい、これにやぁこんな昔話があるんだ。  

 昔、約才という若い貧乏な男が小金を持ったやもめと結婚した。このやもめさん物持ちで、家財道具やなんやら沢山いろんな物を持って来た、おまけに牛まで索いて来たもんだから、約才のやつ、一晩で小金持ちの旦那になっちまって、それから食うにも着るにも心配なくなった。  

 ところでこの村に標秀という畑仕事はしない、水仕事は嫌いだという小娘がいた。器量がいいから若者にはもてたが浮気者だ。この標秀、若くてかっこいい約才が年増のやもめと一緒になちまったので、やきもち半分のいたずら心をだして約才に流し目をおくり、ちょっかいをだし、しまいには約才の女房になったやもめの悪口まで言いだしたもんだから、たちまち約才は標秀のとりこになっちまって、毎日帰って来ると、あることないことで女房を怒鳴りちらし、茶碗や腰かけを投げたり叩いたりした。女房はもとはやもめで年上でもあることから我慢するしかなかった。

 ある時、約才は標秀の所に行って、何日かして帰ってくると離婚すると言い出した、女房はそなんこと言わないで仲よくしていこうと言ったが、約才は言うことをきかない、女房は自分の運命を嘆き約才の言う通りにするしかなかった。約才は標秀と早く結婚したいもんだから、毎晩出ていけ出ていけと催促する、女房は仕方なく、少しばかりの着物をまとめて家を出た。ところがやもめが約才の女房になる時持ってきた木箱や家財道具に足が生えてやもめと一緒に出て行くとは誰も知らなかった、牛もまるで人に索かれて行くように、やもめのあとについて出て行った。

 約才は慌てて頭に巻いた白い布をほどいて牛の首にまきつけ索き戻したが牛の力が強くて索き戻せない、布は引きちぎれてしまい約才はうしろにころげてしまった。牛の首に残った白い布はだんだん皮のなかに埋まって白い筋に変わっておちなくなった、それで今でも首に白い筋のある牛がいるというわけさ。

 恩知らずの約才は家財道具も牛もなくなり、またもとの貧乏人になって標秀を訪ねて行ったが、標秀は何にもない約才を見て、門を閉め、相手にならず、しまいには犬をはなして約才にけしかけた。約才は恨んだり、怒ったりしたが、とうとう羞しくなって、哈尼村から逃げ出し何処へ行ったかわからなくなっちまったとさ。  

     西双版納哈尼族民間故事集成               1993,1,13

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