ミミズの頭に何故タガがあるか
ある日、仏教の祖釈迦と道教の洪君老祖が山の麓で会い、主従を賭けて互いの法力を試そうとした。
釈迦が「あんたはどんな法力があるのか、まずやって見せてくれ」と言うと洪君老祖は「わしはもとの体で、目の前のこの山をぐるりと三回とり巻いて見せよう」と言った。洪君老祖がこうした法術が使えるのは洪君老祖はミミズから修練して道教の祖となったからである。
すると釈迦は「じゃあ、もしあんたがこの山を三回とり巻くことができれば、わしはあんたを師とあがめよう、だがもしとり巻けなかったら、あんたはわしを師とあがめるのだぞ」と言い、二人は手を打ち約束を交わした。
賭けが始まり、洪君老祖はもとのミミズになり、山をとり巻きだした、一周りまた一周りと巻き、二周り半になったところで釈迦は慌てだした、ミミズがもうひと踏ん張りすれば、三周りになり自分の負けだ、負けて師になれないのはいいが仏教が道教の下になるわけにはいかない。
そこで釈迦は洪君老祖が体を伸ばしてとり巻いている山をふくらませる法力を使った、洪君老祖はもう目前に勝つことが分かると、釈迦が使う法力がはっきり分かり、もっと力を出し裂け目ができるのも構わず体を伸ばしていったが、とうとう体が千切れてしまった。
釈迦はこれを見て洪君老祖を惜しみ「あんたは修練を積んでこんな大きな術を使えるなんて、本当にすごい。わしもあんたをこのままにしてはおけない」と言いながら、洪君老祖の千切れた体を手に持ち、こすったり、しごいたりすると千切れたところから長くなりそこに継ぎ目ができてタガをはめたように残った。
ミミズの頭のタガはこうしてできたのである。
李占春故事選 1996・7・16