鷹はなぜ兎を襲うか
昔、森の鷹はお腹が空くと小鳥を捕まえて食べました。そしてお腹が一杯になると目を細めて眠るのでした。
ある日、鳩とカササギは「鷹は私たち小さな鳥ばかり食べる、それで私たちの家族も随分食べられた、ひとつ私たちを食べないように頼み行こう」と相談して鳩とカササギは鷹の所へ出かけました。
鷹はちょうどお腹が一杯になり眠ろうとしていましたが、鳩とカササギが来ると「お前たち何しに来たんだ、わしはお腹が一杯なんだ」と言いました、鳩とカササギは「ちょっとお願いがあるんですが」と言いました、「何だ、早く言え」 「私たちは鷹さんに随分食べられていますが、鷹さんはどうして同じ鳥の仲間を食べるのですか、鷹さんと私たちはみんな空を飛ぶ仲間じゃありませんか……これからは地面を走るふっくらした獲物を探して食べて下さいよ」と言いました。
鷹もよくよく考えると道理なので「よし、分かった、わしはこれから、ふっくらした地面を走る奴を捕まえて食べよう」と言いました。これを聞いて鳩とカササギは喜んで帰りました。
さて、この話はとても早く狼や虎、豹たちに伝わりました。虎や豹は強いので驚きませんでしたが、狼は“俺はあいつにはかなわない、ここはひとつ鷹に何か贈って、俺たち家族が食べられないように頼んでおくにこしたことはない”と考え、一塊りの豚の肉を鷹に持って行きました。鷹はそれを食べるととても美味しいので「お前さんはいい物をくれたから、狼たちは食べないよ」と言いました。
狐も“何かやって頼んでおかなくちゃあ”と考え、太っためん鶏を捕まえて持って行きました。鷹はそれがとても美味しかったので狐も食べないことにしました。
ある日、木の上にいた猿は兎に「兎さん、鷹に何か持って行ったかい、何もしないと鷹に食べられるよ」と教えました、すると兎は「鷹もたいしたものだな、俺は虎を騙して井戸の中へ落として、溺れさせたこともあるんだ、鷹なんぞ怖くない」と答えました。
猿は「強がらない方がいいよ、虎は虎、鷹は鷹だよ、ずるい狼や狐は鷹に贈り物をしたよ、あんたもした方がいいよ」と言うと、兎は「さっき狼や狐に会ったが、あいつら何も言わなかったなあ」と言いました。すると猿は「それはそうさ、誰だって、贈り物を貰った、やったなんぞ言うものか、貰った方もやった方も分かっているのに黙っているんだ。兎さんも何か持って行かないと損するよ」と言いました。
そこで兎は長い耳を振って「よし、俺も鷹に何かやろう」と言って、何とか一塊りの肉を算段して、南山の石の隙間に入れて置きました、そして飛んで来た鷹に「鷹さん、南山に肉を置いておきましたから食べて下さい」と言いました、鷹は「おおそうか、腹が減ったら取りに行くよ」と言いました。
鷹はひと眠りしてから、あちこちをゆっくり飛び回り、お腹が空くと兎が置いたという肉を思い出して、南山に飛んで行ってみると、嘘ではなく、確かに石の隙間に肉がありました。
鷹は食べたくなって、飛んで行って石の隙間の肉を強く啄みました、ところが石の隙間に嘴が入って抜けなくなってしまいました。
鷹は痛いのを我慢して、ありったけの力を出して、やっと石の隙間から嘴を抜きましたが嘴は裂けて皮がはがれ、血が流れました、鷹は“フウフウ”言いながら「兎の奴め、わしをなめやがって、あいつを食ってやる」と怒りました。それから鷹は兎を見ると必ず襲いました。
そして長い月日とともに鷹は兎を襲って食べる習性を身につけるようになったのです。だから鷹は今でも兎を見ればすぐ襲います。
四老人故事集 1996・5・12