小豆腐
昔、ある処にお爺さんとお婆さんが住んでいた。子供がなかったので何時も娘娘廟に行ってはお線香を上げ、「娘娘様、たとえ豆腐三個の大きさの子供でもかまいません、どうか早く子供を授けて下さい」とお願いしていた。すると、ある日、お婆さんに本当に子供が宿り、やがて男の子が生まれた。この子は七、八歳になっても豆腐三個分の大きさにしかならなかったので村の人はみんなこの子を“小豆腐”と呼んだが利口な子であった。
ある日、泥棒が李さんの家の牛を盗もうと、まず小豆腐を捕まえて脅かし、小豆腐を無理やり李さんの家に忍び込ませ、内側から門を開けさせると牛を盗み出した。小豆腐は門を出るとわざと大声で「オーイ!おいらに大きな牛を盗ませておいて小さな牛はどうするんだい」と怒鳴った。これを李さんが聞いて家から飛び出したので、泥棒は牛を放して逃げ、小豆腐も逃げた。
翌日、李さんはお爺さんに「お前さんちの小豆腐は昨夜、泥棒と一緒に俺の家の牛を盗もうとした、お前さん、あの子をしっかり見ているのかね」と言った。お爺さんは困ってお婆さんに「あの子はさっぱり大きくならないし、意気地もない。それにわしらも一日一日歳を取るばかりであの子を何時までも見てやれないからお寺に預けよう、そうすればわしらの心配もなくなる…」と言った。お婆さんも仕方なく承知した。
お寺に預けられた小豆腐は一生懸命に働いた、体が小さいので何でも使う物が小さく、小さな塵取り、小さな箒、小さな熊手で庭を掃き、仏殿を拭き一日中忙しかった。それなのに和尚さんはしじゅうぶつぶつ文句を言って小豆腐を叩いた。小豆腐は面白くないけれど我慢するしかなかった。 ある日の朝、和尚さんは小豆腐に「今日わしは町へ托鉢に行って来るからお前はしっかり留守番をしておくれ。決して仏殿を開けてはいけない、外から鳥が入って仏殿に糞をすればお前は仏様の罰を受けるぞ」と言った。小豆腐は心の中では大喜び、今日は一日楽しく遊べるぞと思いながら「和尚様、心配しないで行ってらっしゃい、決して仏殿は開けませんから」と答えた。
和尚さんが出かけてから少したって小豆腐は仏殿の扉を開け、赤砂糖を少し盛ってその上に白い小麦粉をまぶし、まるで鳥の糞のように見せかけ、仏殿のあちこちに撒き散らし和尚さんが戻って来る頃を見はらかって、わざと外から鳥を仏殿に追い込んだ。鳥がどっと仏殿に鳴きながら入った時、和尚さんが帰って来て「コラ!わしが出て行く時に仏殿を開けてはいけないと何度も言ったろう、それを聞かずこんなに仏殿を鳥の糞だらけにしてどうするつもりだ、床を這って鳥の糞を嘗め床をきれいに掃除しろ」と怒鳴った。
小豆腐は「ハイハイ、和尚様怒らないで下さい、わたしが嘗めてきれいにします」と言って、自分がわざと撒いた砂糖の塊をさも鳥の糞が美味しいというように一つ一つ嘗め回った。それを不思議そうに見ていた和尚さんは小豆腐が最後の塊を嘗めようとした時、とうとう「小豆腐、鳥の糞はそんなに美味しいのか」と聞いてしまった。小豆腐は舌を嘗め回しながら「和尚様、この鳥の糞は本当に甘くて美味しいですよ」と言った。和尚さんは心の中で“わしはこの歳になるまで鳥の糞なぞ嘗めたことがない、ひょっとしたら本当に美味しいのかもしれない、そうでなければ小豆腐があんなに美味しそうに嘗めるわけがない”と考えた。そこで和尚さんは床にしゃがみ、小豆腐に「残った糞は美味しいかどうか、わしに嘗めさせてくれ」言った、小豆腐が「いいですとも、この塊は和尚様にあげます」と言うと和尚さんは床に這って嘗めてみると、本当に甘くて美味しい、和尚さんは“鳥の糞はもともとこんなに美味しいものだったんだ、明日は小豆腐を托鉢に出して、わしは寺で鳥の糞を嘗めることにしよう”と考えた。
翌朝、和尚さんは早く小豆腐を起こして「小豆腐、わしは今日どうも気分がよくない、お前わしに代わって町へ托鉢に行ってくれ、暗くならないうちに帰ればいい」と言った。小豆腐は願ってもないことと大喜びで町へ出かけた。和尚は小豆腐が遠くになるのを見届けると、すぐ仏殿の扉を開け鳥の群れを呼び入れ、鳥たちが仏殿に一杯の糞を垂らすと喜んで鳥の糞の塊を口の中に入れた、とたんに口の中に嫌な臭いが広がり吐き出してしまい、やっと小豆腐に騙されたと気がついた。夕方、小豆腐はいい気分で寺に入るやいなや、和尚さんに捕まりガンガン殴られて役所に連れて行かれた。
役人は和尚さんの話を聞くと小豆腐に「お前はそもそも寺の小僧でありながら和尚さんを騙すとは何事だ」と言い「牢番、小豆腐を縛れ」と言った、すると二人の牢番が出て来て小豆腐を抑えつけたが体が小さくて、縛っても吊るしてもうまくいかない、仕方がないので牢番は小豆腐を袋に入れて壁に掛けておいた。そこへこの牢番の老父がやって来た、この老父も豆腐三個ぐらいの大きさなので、人はみんな老豆腐と呼んでいた、老豆腐は来てみると息子がいず、壁に掛けた袋が動いている、何だろうと触ってみた。
小豆腐は袋の中から外を見ていると、自分の背丈と同じくらいの老父が入って来て、袋を触るので「オイ、動かすな、動かすな、俺は今ただれ目を治しているんだ」と言った。実はこの老豆腐もただれ目で何とか治したいと思っていたので、「お前さん、出て来てわしと替わってくれ、わしもただれ目を治したいんだ」と言った。小豆腐は誰かに袋から出して貰いたいと思っていたので喜んで「いいよ、それなら袋の口を解いてくれ」と言うと老豆腐が袋の口を開くと小豆腐は袋から飛び出し老豆腐を袋の中に入れ、袋の口をしっかり結んで、逃げてしまった。
しばらくして役人が来たので、牢番は「小豆腐は私の老父より小さいので縛れず袋に入れておきました、袋ごと叩けばよいと思います」と言うと役人は「それはいい考えだ、牢番、小豆腐を袋ごと力一杯叩け、小豆腐、まだ和尚に逆らう気か、どうじゃ」と言った。牢番が小豆腐と入れ替わった老豆腐の入った袋を地面に叩きつけたり殴ったりしながら「小豆腐、まだ和尚さんに逆らうか」と言うと、袋の中から「叩くな、わしはお前の父だ」と老豆腐が叫んだので、「この野郎、俺の父親だとは何だ」とまた力一杯に殴ってとうとう老豆腐は殴り殺されてしまった。
牢番は袋の中から声がしなくなったので袋の口を開けて地面に引き倒すと、中から老豆腐が出てきた、牢番はそれを見てどうして小豆腐が自分の父親に変わってしまったのか分からず父親をだき抱えて泣き出した。 この時、小豆腐が入って来て、牢番を指して「やあ、お前は殺人犯、自分の父を殺すなんて、大逆罪だ」と言うと「お役人様、わたしは和尚様がわたしを叩くから、和尚様に逆らいました。それをこの牢番は何の罪もない自分の父親を殺すなんて」と小豆腐が言うと役人も牢番もみんな口を閉じて何も言えなかった。
でも役人は判決を下すしかなくて「小豆腐が和尚様に逆らったのは無罪、牢番が父親を死なせたのも無罪。下がれ!」と言った。小豆腐は喜んで家へ帰った。
中国民間文学集成遼寧巻沈陽市巻中 01・1・28校正
<注> 日本昔話事典『俵薬師』