身代わりを捉える

 非業の死を遂げた人は、三年め毎に身代わりを立てなければ転生できないと言う。

 ある河のほとりに大きな瓜畑があった、瓜を植えているのは張爺さんである、毎年春になると瓜棚を作り、そこに住んで瓜を育てる。ある年の春、そこへ毎晩三十歳ぐらいの男が遊びに来るようになった、気の合う二人はしばらく話し、それから男は帰る。
 ある晩、機嫌よく話したあとで、男はこう言った、「お爺さん、明日はお別れのお祝いです」 「別れがどうしてお祝いになるのだ」 「実は私は三年前にこの河で水死した亡霊です、明日でちょうど三年になり、私の身代わりの男が来るのです」 そこで初めて張爺さんはこの男が転生の身代わりを探す亡霊であることが分かった。「あんたの身代わりになるという男は明日の何時ごろ、ここへ来るのかね」 「明日、二十歳ほどの若者がこの河を渡ります、それが私の身代わりです」 「それはよかった、わしも嬉しいよ」と張爺さんは言った。

 翌日、張爺さんが瓜棚の下に座っていると、昼ごろになって、本当に二十歳ぐらいの若者がひどく焦った様子で急ぎ足でやって来た。張爺さんは慌てて立ち上がると「オ−イ、若い人ちょっと来てくれ、話がある」と呼び止めた。

 若者は老人に呼び止められたので 「お爺さん何か用ですか」と尋ねると、張爺さんは若者の持っている包みをさして「それは何だね」と聞いた、「薬です、わたしの母が病気で薬を買って帰るところです」 「あんた河を渡らないほうがいい、亡霊が今日、身代わりを探していて、あんたが狙われている」 「でもわたしの母は死にそうなのです、たとえ亡霊がわたしを狙っていても、わたしは河を渡らねばなりません」
 張爺さんは若者の親思いに感心して「あんた、わし言うことはみんな本当だ、間違っても河を渡ってはいけない、じゃあこうしよう、あんたの家は何処かね、わしが代わりに薬を持って行ってやる、わしと亡霊は友人で、わしを身代わりにはしないだろう、あんたはここで瓜の番をしていてくれ、わしが帰って、それからあんたが帰れば大丈夫だ」 「それではお爺さんに迷惑がかかります」 「心配するな、人の命を救うのだ、これでわしも徳が積める」張爺さんは薬の包みを若者から無理に取り上げ、若者の家を確かめると河を越した。

 若者は張爺さんを見送り、瓜棚の番をしていた、若者の家は遠く張爺さんは夜になってやっと帰って来た。するとすぐあの亡霊が現れて、張爺さんに「あなたは自分だけ徳を積み、私を幽界に閉じこめるなんて、私はまた辛い三年を待たねばなりません」と恨めしそうに言った。
 張爺さんは「怒らないでくれ、どういうことかあんたも聞けば分かってくれる」と言って、若者を振り返り「ここへおいで、こちらはわしの友人の亡霊だ」と言い、それから亡霊に「この若者があんたが捉えようとした身代わりだ」と言った、若者は張爺さんと亡霊の前に泣き伏して「有難うございます、わたしが母の薬を持って河を渡るのにこのご老人はわたしに代わり、何十里も先のわたしの家へ行ってくださいました。あなたはわたしを身代わりにできず、また三年の時を失なわれましたとか、みんなわたしのせいです」と言った、張爺さんは亡霊に向かい「あんたこれで分かってくれたかね、この若者の母親は死にそうだったんだが、わしが行って薬を飲ますと息を吹き返したのだ、もしあんたがこの若者を身代わりにしていたら、あんたは一度に二つの命を奪っていたんだ」と言った。

 亡霊は心の中で“俺だって身代わりにされた時は女房と子供、年寄りがいたんだ”と思い悲しかった。張爺さんは「わしとこの若者で道教の和尚を呼び、あんたの済度を願い、身代わりがなくても、どんな家に何時でも転生できるように祈って貰おう」と言うと、亡霊も感動して張爺さんの前にひざまずき「よろしくお願いします」と言って消えた。

 翌日、張爺さんと若者は亡霊のために道教の和尚を呼び三日三晩、経をあげ亡霊の済度を願った。すると翌晩、亡霊が嬉しそうに現れて、「あなたのお陰で閻魔大王が私に身代わりなしに転生を許してくれ、明日、張村の張長者の家に生まれることになりました、もし折りがあれば張村に生まれる小さな弟に会いに来てください、さようなら」と言って消えた。
 三日たって張爺さんは瓜を担いで張村へ瓜を売りに出かけた。果たして張長者の家には太った男の子が生まれていた、だがこの子は生まれてから泣くばかりで、誰があやしても泣き止まないと噂されていた、張爺さんはその子がもし本当にあの亡霊の転生ならば、わしが行って、あやせば泣き止むのではないかと思い、瓜を担いで張長者の家へ行き「生まれた赤ちゃんが泣き止まないそうですが、わしがあやしてみましょう」と言うと長者は喜んで「それは有難い、早くあやしてくれ」と言った。

 張爺さんは家に入り赤ん坊を優しく抱いてなだめ、小さな声で「こんないい家に転生して裕福で幸せな一生を享けたのにどうして泣くのだ、わしが会いに来たよ」と言うと、赤ん坊は小さな口で、「フフフ」と笑った、それで張爺さんはこの子は確かにあの水死した亡霊が転生したのだと思った。  

付記 <吹笙人和鬼交朋友>はこれと同系の話である。笙を吹く人は亡霊の身代わりになるのを三回破る、最後   に閻魔大王が亡霊を城隍廟の神とする。

           撫順市巻上                                        1996・3・6                             

<類話> 目録3…137 目録4…194

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