二郎神山を追う
ある日、張天師は天界の宮殿に出かけることになり、小さい時から一緒にいる甥の楊二郎に「お前は何時もわしについて回っているが、今日は天界の宮殿に行くからついて来るな」と言うと、二郎は「いやだ、今度は叔父さんと一緒に行って天界の宮殿がどんなものか見たい」と言った。「お前、俺が天界に連れて行ってやったら、言うことを聞くか、俺がこうしろと言ったらその通りにするか」 「うん、するよ」 こう約束して張天師は二郎を連れて天界に行った。
張天師は天界の宮殿に着くと、門の前で二郎に「お前はここで待っていろ、俺は中に入って用事を済ましてくる、終わったら一緒に帰るからな」言った。「うん、わかった」 そこで楊二郎は外で待ち、張天師は宮殿の中に入った。
そのうちに二郎は退屈になってそこらを歩き回ると、門のそばに麻の茎が束ねてあった、二郎は何もすることがないのでこの麻の茎の皮をむいて小さな紐を作った、帰ったら鞭を作りその先にこの紐をつけようと思ったのだ。やがて張天師が用事を終えて戻って来て、張天師は紐を持った二郎を連れて家へ帰った。
二郎はまだ12,3歳で腕白である。帰ると自分で鞭を作り、この紐を鞭の先につけ、「ドウドウ、行け、ドウドウ、行け」と声をあげ山を叩いて遊んだ。二郎は山をころがして海へ追いやり、山が海に入って見えなくなるまで追った。二郎は四方の山をこうしてころがして遊んだ。だから地上の平野は楊二郎が山を追っ払った跡だ、山をころがしていなければ、この辺はまだ山だったのだ。
だが、二郎に海の中を山だらけにされた龍王は山を担いでいられなくなって、天界の玉皇大帝に「玉皇大帝、困りますよ、あなたが楊二郎に山を海へ追わせるから、わたしの海がみんな埋まって海水が溢れてしまいます、どうすればいいのですか」と言った。「わしが楊二郎に何時、山を追わせたと言うのだ、そんなことない」 「でも二郎は沢山の山を鞭で追い払い海へころがしています」 「誰がさせているのだ」 「誰がさせているのかわかりません」 「張天師に違いない、張天師を呼べ」 こうしてまた張天師が呼びだされた。
張天師が天界に上り、玉皇大帝に何事ですかと尋ねた、「何事ですかだと?、この間、お前は誰を連れて来たのだ」 「私の甥を連れて来ました」 「連れて来て何処で待たせておいた」 「南天門で待たせました」 「そいつはわしの天の麻を盗んで鞭を作り、山を追い海へころがしているぞ、このままでは困ると、龍王が訴えてきた」 「わかりました。帰って二郎からその玩具をとりあげます」と言って張天師はすぐ帰った。
楊二郎はまだ山を追って遊んでいた。張天師は子供のものを無理に取りあげるのはよくないと考えたが、この玩具を持たせておくわけにもいかない。張天師は夜、二郎が寝ている間に鞭の先の天の麻の紐をただの麻の紐に取り替えてしまった。
翌日、楊二郎はまた山を鞭で追いかけて遊ぼうと思った、しかしこんどは鞭で山を叩いて追っても山は動かない、強く叩いてもあの山もこの山もどうしても動かない。今どの山にも窪地があるのは楊二郎が動かない山を強く叩いた跡であると云う。
撫順市巻上 1996・1・6