馬は龍が変わったもの
人はよく“龍馬精神”と言うが伝説によれば馬は龍が変わったのである。
ずっと昔、龍王が天界の決めた日を間違えて雨を降らしたのでに天界で断罪された。龍王の息子三太子は父の仇だと、ことを荒立て河の両岸に洪水を起こし、大小九つの町を水没させ、おおくの人々を長い間苦しめた。
それをある神が天帝に告げると、三太子は頭の角をきられ、体の鱗をはぎとられて馬にされ、下界に落とされて、人のための苦役に服すことになった。
それから下界には龍が変わった馬が現れ、車をひくのも田畑を耕すのも牛よりずっと早かった、やがて書面を伝送したり、戦争で戦ったり、馬の用はますます増えていった。ある時、馬は龍の本性を現し人に従わなくなった。人を噛んだり、蹴ったり、時には空中を飛び回って家を壊し、作物を蹴散らし大木を蹴倒した。馬になっても龍の本性は改まらなかったのである。
観世音は人々が馬に苦しめられる様子を見て、天帝に「龍王の三太子は河にあって龍王に従わず、天界にあって天帝に従わず、下界にあって人に従いません。天界に呼び出して取り締まるべきです、そうしなければ人に利益をもたらせず、かえって苦痛を与えてしまいます」と進言した。
天帝は大いに怒り、三太子を捕らえるために天兵を下界に下した。天界は密雲に閉ざされ、天兵は雷鳴をとどろかせ雷光をひらめかして下界に下り三太子を捕らえた。さらに天帝は巨霊神に三太子の心臓をえぐりだす極刑にせよと命じた。
巨霊神が三太子の頭の後の首筋の皮を肩の方にかきよせた時、観世音が来て「心臓をえぐらず龍の命を残し、肝をとって荒い気性をなくせば龍の本性の大方はなくなります、そしてまた馬が人に役立つように天帝の御慈悲をお願いします」と温情を求めた。
天帝は観世音の本意を汲み、三太子の心臓をえぐらず胆をとって荒い気性をなくし下界に送り返し、規律を守り、真面目に下界の人に尽くす馬にした。
これで馬は前よりも従順になった、それは馬に胆がなくなったからである。牛、羊、豚、犬、鼠さえみんな胆があるのに馬にはない。馬の頭の後から真っ直ぐ首筋になり、肩のあたりに立て髪があるのは、龍の皮が残っているのである。
撫順市巻上 1995・12・21
<注>
龍馬精神…元気で溌剌とした精神