格林阿の話   

 昔、盛京城(現在の沈陽市)の北に格林阿という学者がいた。この人は聡明で頓智に富み、霊魂などを信ぜず、馬の上から庶民を見下す権力的な人間を皮肉っては懲らしめた。                 

1 人殺し  

 ある日、千仏寺のラマ僧が信者たちに説教をしていた。
 輪廻の説教になり、ラマ僧は信者たちに生き物を愛し、殺生はするな、牛を殺せば牛に生まれ変わり、豚を殺せば豚に生まれ変わる、蟻を踏み殺せば蟻に生まれ変わると教えた。

 ラマ僧のこの説教を聞いた格林阿は笑って、「あなたの説教にように、何かを殺せば必ず殺した何かに生まれ変わるなら、私たちは前世で誰もみんな人を殺ろした犯人だ、だからまたこの世に人間に生まれ変わったわけだ、ラマ僧のあなたも前世できっとラマ僧を殺ろしたから、またラマ僧に生まれ変わったのだ。どうりで偉い役人が人殺しを好み、他人に豚や羊を殺させるわけだ。役人も来世でまた人間に生まれたいからだな。こう考えていけば、何を殺すって人間を殺すのが一番だ、なにしろ人を殺せば、来世でまた人間に生まれ変わるんだから」と言った。

 これを聞いたラマ僧は何も言えず、ただ目を丸くしてポカンと立っているだけだった。                   

2 困と囚

 格林阿の家の庭に一本の棗の木があり、毎年棗の実が沢山なっていた。
 一人の風水易の先生が格林阿の家の前を通り、庭に沢山の実のついた棗の木を見ると門の前に立ち止まり、ア−ア−と嘆き、「ここのご主人はいませんか」と聞いた。
 格林阿が「私です、何ですか」と答えると、風水先生はおもむろに「あなたの家の庭は四角ですね、これは“口”の字の形です、口の中に木、これは“困”の字だから暮らしに困りますよ、それに一本の棗(zao)だから早く(zao)困るようになりますよ、もしこれからの生活をよくしたいなら、何としても棗の木を切りなさい、それからわたしが占って、厄よけをしてあげます」と言った。

 これを聞いた格林阿はニコニコしながら風水先生に「あなたの家の庭も“口”の字形ではありませんか」と聞くと、風水先生はうなずきながら「そうです“口”の字形です、でも庭の中に木はありませんよ」と答えた。
 格林阿はまた「先生、あなたの家は庭の中にあるのでしょう」 「そうですよ」 「部屋に人が住んでいますか」 「住んでいますよ」それを聞くと格林阿は大声で笑い「口の中に木で困の字になるなら、口の中に人は、つまり“囚”の字、どうもあなたの家の人は囚人らしいですね、囚人になりたくないからと言って、あなたは家中の人をみんな斬りますか」と聞いた。
 風水先生はこの話を聞くとマゴマゴしながら、やっと「信じるかどうかはあんた次第だ」と言って小さな包みを抱えて逃げ出した。  

           沈陽市巻中                                     1995・11・23

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