耳をふさいで鈴を盗む

  范家の表門には門鈴がかけてある、泥棒がこの門鈴を盗もうとした。
しかし、誰でも門鈴にさわればすぐ、鈴は“ティンタン、ティンタン”と鳴るから、盗むのは難しい。

 門鈴を盗もうとした泥棒もやはり、それを考え、門鈴の下に立って手を伸ばしたり、縮めたりして決心がつかない。そこで眉間に皺をよせ、しばらく考えると、その方法を思いついた。門鈴が“ティタン”と鳴ると人が来る、それは耳が鈴の音を聞くからだ、それなら耳を塞げば耳に鈴の音は聞こえない筈だと…  

 そこで、泥棒は自分の耳に栓をして塞ぎ、それからおおいばりで門鈴に手をかけて盗もうとした。
もちろん門鈴はすぐ鳴り、門の中から人が出て来て、これを見ると「アッ、泥棒」と叫んで、泥棒はたちまち捕まってしまった。すると泥棒は「エッ、わしには鈴の音が聞こえないのに、どうしてあんたたちには聞こえたんだ」と言った。

(中国古代寓話) 中国幼児故事精選                     

<注> 范氏(晉国の大夫の家)が滅亡したドサクサに、そこから鐘を盗みだした男がいた。さて背負って逃げようとしたが、鐘が大きいので、背負いきれぬ。そこで椎でこれを打ち壊そうとしたら、ガーンと鳴ったので、男は人に聞かれて横取りされてはと思い、あわてて自分の耳をふさいだ。(自知篇)…秦の宰相呂不韋(始皇帝の実父)が門客に命じて作らせた『呂氏春秋』の中から…東洋文庫『中国笑話選』309頁2001/1/5加筆

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