福の神と三人の乞食
福の神の廟に三人の乞食が住みついていた。三人の乞食は何時も金を儲けていい暮らしをする夢を見ていた。人は高きを望み、水は低きを流れるものだ。
三人の乞食は毎日貰って来た残飯を福の神に供え、草の茎をお線香がわりにしてあげ、ひざまずいて「福の神さま、わたしどもを助けて早く金儲けさせ、一日も早くいい暮しをさせてください」と唱え、毎朝早く起きて廟の中や外、前や後ろを綺麗に掃除していた。
ある日、三人の乞食たちが何時ものように物貰いに出かけると、福の神の夫婦が話し始めた、福の神の女房は「あんたは本当にしょうがないね、高い丘にまた土を盛るようなことばかりして、どうして金持ちにお金をやり、貧乏な者にお金をやらないのさ。見なさいよ、ここに住みついている三人はわたしたちによくしてくれるじゃない。乞食なのに貰って来た物を供え、わたしたちに先に食べさせ、お線香がなければ香炉に草の茎をさすし、廟の中や周りも綺麗にしてくれるのに、あんたはどうしてあの三人にお金をやらないのさ」と言った。
すると福の神は笑って、「う−ん、お前は、お前は何もわかっていない、三人には金がない方がいいのだ、もし金があれば命だってあぶない。そうすればわしらの廟の中や外を掃除する者が一人もいなくなる」 福の神の女房は「あんたでたらめを言わないで、わたしゃそんなこと信じないよ」と言うと、福の神は「お前、嘘だと思うなら試してみょうか」と言った。
翌日の朝、またこの三人の乞食は残飯などを福の神夫婦に供え、叩頭の礼とお祈りを唱え、外から探して来た草の茎を香炉にさすと灰がなんだか固い、手で灰をかくと、アッ、三枚の光った銀貨が出た。「アレェ」と、三人は嬉しくなり、一人の乞食は「ヤア、これは福の神が俺たちを助けてくれたんだ、これだけ金があればもう残飯は上げないで、酒や肉、線香を買って福の神にお礼しようじゃないか」と、ほかの二人に「肉と線香を買いに行ってくれ、俺は廟の中や周りを綺麗に掃除しておく、そして愉快に福の神と一緒に飲んだり食ったりしよう」と言った。そこで、この乞食が廟に残り、ほかの二人の乞食は金を預かって買い物に出かけることになった。
金を預かった乞食は歩きながら“ウ−ン、三枚の銀貨は品物を買えば、残りは二枚、やつらと分けるには足りない“と考えた、“そうだ、一緒に来たこいつを殺せば、残った二枚は二人で分けられる、そうしよう”と町へ行く途中の井戸に来ると、金を預かった乞食はもう一人の乞食をドボンと井戸につき落として殺してしまった。
金を預かった乞食は品物を買いおわった帰り道でまた考えた“ウ−ン、この二枚の銀貨は”一人一枚、もし廟に残ったあいつも殺せばこの二枚の銀貨はみんな俺のものだと考え、毒薬を買って肉の中に放り込んだ。
話しかわって、廟を掃除して二人を待っていた乞食は“もうすこしで、あいつらが品物を買って帰って来るが、残った銀貨を三人で分ければ分けまえは少なくなる、そうだ、あいつらを殺せば残った銀貨は俺のものだ”と考えると棍棒を探して廟の門の陰に隠れた。
この時、品物を買った乞食が夢でも見ているように楽しそうに帰って来た、ところが廟に入ったとたんに“ガ−ン”と殴られて死んでしまった。廟にいた乞食はこれを見て、一人死んだ、もう一人はどうしたんだ、もうすこし待ってみようと、しばらく待ってみたが帰って来ない。“帰らなければいいや、先に食べよう、食べおわってそれでも帰って来なければ、逃げてしまおう、そうすれば銀貨は俺のものだ”と酒を開け、料理を並べて、ガツガツ、ガブガブやりだした。
その時はもう福の神のことなど頭の中にはなかった。食べたり飲んだりしていると毒が体に回り“ウ−ン”と足をつっぱり、目をむいて死んでしまった。これで三人の乞食は三人とも始末がついてしまった。
さて、福の神は女房に「どうだい、女の身にはわからんことだ、三人ともおだぶつだ、これから、廟の掃除はまたお前さんにやって貰わねばならなくなった」と言った。
撫順市巻下 1995・10・28