ただ喰い(二)
昔、食堂は客が料理を食べおわってから勘定したものだ。そしてサ−ビスとして客が大勢で来ると前菜四点の大皿、一人か二人だと小皿に煮こごり、腸づめ、落花生、皮つきの何かの“つきだし”をだした。
ある日、一人の客が来た。給仕はすぐ「お客さん、いらっしゃい」と叫ぶ。「おお、ごめんよ」 「何にします?」 「包子(ポウズ) をくれ」 「いくつですか」 「三十!」 「熱いせいろ包子三十!」と声を上げ、給仕は包子を三十と“つきだし”を運んで来て、ほかの料理がいるかと、「お客さん、ほかに何か?」と聞くと、客は「いらない」と言う。
すると、給仕は「何もいりませんか、はい、おつゆをすぐ持ってきます」と言って、香菜とほうれん草の葉のはいったつゆを椀にいれて持ってきて、しばらくして包子を持ってきた。
給仕が戻って行くと、この客は自分で持ってきた酒壺を取り出した、それを給仕が見て「アッ!お客さん、お酒持ってんですか」 「俺の持薬の酒だ、ハハ、いけなければ飲まないよ」 「いいえ、いいえ、何か料理はいりませんか」 「ああ、あとで呼ぶよ、急ぐな、行ってていいよ」 「はい」と給仕は行ってしまった。
客は“つきだし”をみんな食べ自分で持ってきた壺の焼酒も飲んでしまうと、包子には手を出さず、つぎに自分で持ってきた大餅(タ-ピン)を出して、椀のつゆを飲みながら食べ、大餅もつゆもみんな平らげた。
「オオ−イ、勘定だ」見にきた給仕はポカンとしてしまった、ア!包子は一つも食べていない、だが“つきだし”と椀の汁はない。「お勘定!」と叫んで声を上げた「三十包子そのまま、“つきだし”酒は持ち込み、汁はサ−ビス、合計……」あとは注文されてない。給仕は「ありません!有難うございます!」と言うしかない。
ああ、あ、一文もとれず“つきだし”と椀の汁はただ喰いされた。
撫順市巻下 1995・10・5