ただ喰い(一)

 昔、何時も仲間の酒や飯をただ喰いする男がいた。それで仲間の連中はみんなこの男を嫌っていた。

 ある日、仲間の二人が一緒に酒を飲もうとしたが、またあの“ただ喰い”に来られたらどうしょうと二人で相談し酒と肴を舟に運びこんで“ただ喰い”にみせびらかした。
 さて、“ただ喰い”は仲間の二人が舟の上で酒を飲むのを見て「あいつら、俺を嫌がっているな、どうしてくれよう」と思案して、あるやり方を考えると、くるりと向きをかえて家に帰った。

 舟の二人は“ただ喰い”が舟を見ただけで戻って行ったので、してやったりと面白がった。二人がしばらく飲んでいると、一つの木の箱がプカプカと流れているのが見えた、やがて箱が舟のへりに寄って来たので、二人は箱を舟に引上げ、開けてみると、アッ!“ただ喰い”が箱の中に座っている!“ただ喰い”は箱の中から出て来ると「あんたたち、ここで飲んでいたのか、俺にも一杯つき合わせてくれ」と言った。

 二人はこれを聞くと癪にさわって、その一人が「飲むのはいいが、一句よんでから飲むことにしよう」と言うと“ただ喰い”は「よし、題をだしてくれ」と応じた。
 その人は「一句には必ず不分明、二句には必ず明白、三句には必ず容易、四句には必ず困難の句をいれ、それで筋の通った四行詩にして、できた者から酒が飲もう。

 「まず俺からやるぞ、
 天上の雲は不分明、地上の雪は明白だ、雪は容易に水と変わり、水が雪に変わるは困難だ」
と言いおわると酒を飲んで料理を食べた。

 二人目の仲間が続けて
 「硯の墨は不分明、紙に書けば明白だ、水は容易に墨となり、墨が水となるのは困難だ」と言って“ただ喰い”を見向きもせず自分の句を作り、酒を飲んで料理を食べた。

 これを見て“ただ喰い”は「残ったのは俺だな、俺も一句だす、どうしたって酒を飲んで料理を喰うぞ、
 箱の中の俺は不分明、舟に上がった俺は明白、俺があんたたちを騙すのは容易だが、あんたたちが俺を騙す困難だ」と言って、酒を飲んで料理を食べた。  

          撫順市巻下                                       1995・10・4

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