判官を背負う
張大胆は友人と胆試しに城隍廟の判官の像を背負って来てまた戻すという賭をして勝った。
ところが、その時に張大胆がとった判官の像に対する礼儀と誠実な態度に判官がひどく感心して、張大胆と交友を結びたいと願う意外な結果になった。
判官は初めに大胆の夢の中に現れ、義兄弟の契りを結び、そのつぎの夜に張大胆を訪ね酒を酌み交わし腹をわって話した。
しばらくつき合って、張大胆は判官が冥土で人間の生死を司どっていることがわかり、そのお陰を蒙もりたいものだと思い、まず頭がよくなりたいと願ってみると、意外にも判官はもう寿命の終わった秀才の頭脳と取り替えてくれた。
たちまち張大胆はそれまでとはまるっきり違った人間になった。度量識見に優れ、能力もあり仕事上手、そのうえ学があって文章もうまい、張大胆は自分の身をもってそれを知ることができた。
そこでつぎに器量のよくない妻の顔を取り替えてくれるように頼んでみると、なんと判官はそれも聞いてくれ、何日か過ぎると寿命が尽きたばかりの綺麗な中年の女の頭を持って来て取り替えてくれた。
大胆は自分の妻の容貌が急に美しくなったので嬉しくてたまらない。だが世間にこの不思議な話が伝わると、それを聞いた妻の実家の母親が来て、わたしの生んだ娘ではないと騒ぎ、死んだ女の親も駆けつけ、知らない親の娘にはできないと言いだして争いになり、とうとう大胆は判官のこの世での友人に自分が選ばれ、思いがけなくその判官の力で普通では考えられない二つの願いがかなえられたのだ……と話した。
こうして張大胆には大勢の親戚ができ、妻は二つの異なった姓の母親をもつことになった。
李占春故事選 1995・9・4