大臣は腹が大きい

 何につけても小事にこだわらぬ大臣がいた。
 この大臣、朝、烏が鳴くと朝廷に参上する、烏の鳴く時刻は正確で、何時も烏の鳴くの聞いて家を出ると丁度いい刻限に宮廷に着く。

 この大臣の側女と若い用人が仲よくなり、ある日、二人だけで楽しもうと、手はずを決め、時間前に烏の巣をつつき烏を鳴かせた。大臣は烏の鳴くのを聞いて朝廷へ参上したがまだ二刻も早い。すぐ邸に引き返して見ると、中から人の声がする。  

 男……「わたしはあなたが好きです、つるつるしたお団子のようで」  
 女……「あたしもあなたが好きよ、腰の強いうどんみたいで」  
 男……「あなたは大臣が好きじゃないのですか」  
 女……「あたしがどうして好きになるのよ、あんな干からびた枯れ枝」

 それを聞いた大臣はその時は何も言わなかった。
 そして八月中秋の月見の宴にかこつけて皮肉ってやろうと、用人を同席させ“月”と題した詩の罰杯をした。

 まず大臣が詠んだ。
     『まあるい月が東に出た、樹上の烏をおどし、
     団子がうどんを抱いて寝る、干からびた枯れ枝がこれを見ている』 

 用人、これはまずいとすぐ詠み返した。
     『まあるい月が南に出た、半年たったこの話、
     君子は小人を構わず、大臣の腹は広く船が漕げる』  

 後世、「大臣の腹は船が漕げる(大人物は度量が大きい)」と言うこの話が伝わった。   

           李占春故事選                                      1995・9・2

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