互いに罵る

 ある日、糞虫の夫婦が一緒に糞団子を作っていた。地面が湿って糞団子は転がすほどに大きくなったが二人は疲れて舌が乾いた、我慢できなくなった亭主は「待っててくれ、俺は水を飲んで来る」と声をあげて走り、道のわきの溝で水をガブガブ飲んだ。その時、馬にまたがった人間が通りかかり、糞虫の亭主を踏み殺してしまった。

 糞団子の番をしていた糞虫の女房はいくら待っても亭主が戻って来ないので心配になり、亭主を見に溝へ行くと、亭主は踏み殺されている、それを見た女房は大声をあげて泣き、死ぬほどまでに泣き叫んだ。
 この泣き声を聞いた蟇が何事かと外に出て見ると糞虫の女房が泣いている、「わしが本を読んでいるのに、あんたが泣き叫んでいるので出て来たが、どうしたんだ、いい加減にしてくれ」と蟇が言うと、糞虫の女房はツンとして弱気を見せず「なに言ってるの、あたしの亭主は長江の水を飲んで不幸に遇い、あたしはたった独りになったのよ、これが泣かずにいられるもんですか」と言った。

 これを聞くと蟇は「どっちにしろ、お前さんの亭主は死んだんだ、淋しいなら、わしと一緒に暮らしたらどうだね」と言った。
 糞虫の女房は怒り、心の中で、“あたしの亭主がいま死んだばかりなのに、もうそんな勝手なことを言うなんて、イボだらけなお前の女房になんぞなるものか。本が読めるなら、わたしのこの詩がわかるかい” と思い、
   『蟇はそもそも愛嬌がない、全身イボで隙間がない。
   生まれた時から不器量なホウボウだって、お前に恋はしやしない』 とからかった。

 蟇はこうまで馬鹿にされては我慢できず
   『お前は真っ黒、炭のよう、朝から晩まで糞団子つくる。
   妲姫がお前のように醜けりゃ、殷の紂王は天下をとりはしない』 と罵った。

 こうして糞虫は蟇を罵り、蟇は糞虫を罵り、日の暮れるまで罵りあったとさ。   

           李占春故事選                                      1995・9・2

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