青蛙と蜘蛛

 昔、ある家の屋根の下に一匹の蜘蛛と、その家の塀の下に一匹の青蛙がいました。  

 ある日、青蛙は蜘蛛が軒に上ったり下りたりして網を張っているのを見て不思議に思い「蜘蛛さん、そこで何しているんだい」と聞きました、蜘蛛が答えました、「網を張ってるんです」 「網を張ってどうするんだい」 「虫を捕まえて食べるんです」 青蛙はそれを聞くと、大きな声で笑って、「蜘蛛さん、わしは虫を捕るのに、お腹から糸を出して網を編むなんてしない、虫が飛んで来たら口を開いて一息だ、お前さんはのろまで馬鹿だねぇ」と、青蛙が偉そうに言うので蜘蛛は怒って「誰だってそれぞれの力があるのです、自分ばかり威ばってひとをけなすもんじゃありません」と言いました。

 ところが青蛙は「ハハ、ハハ、小さな蜘蛛にどんな力があるんだ、羞かしいんだろう」と言うので蜘蛛は青蛙のこの思い上がりを諫めてやろうと心に決め、頭を働かして一計を巡らし「それなら青蛙さんはわたしより力があるんですか」と言うと、青蛙は得意そうに「当たり前だ」 「では、今から試してみようじゃありませんか」 「何を試すのだ、何だってお前を負かしてやる、何を比べるか早く言え」 「前の木の下の井戸に一緒に飛び込んで、先に水面に着いた方が勝ちにしましょう」 「よし、決めたぞ」

 青蛙と蜘蛛は井戸の上に立って、同時に声をあげて飛び込みました。すぐ“ボチャン”と音がして青蛙が水面に落ちました。そのあと蜘蛛は水の上に浮かぶと、すぐまた糸をたぐって上に戻り、井戸の中に向かって「青蛙さん、早く上がって来なさいよ」と叫びました、青蛙は不服そうに「いま上がるさ」と言いましたが、井戸は深く、周りは滑り、右に左に飛び跳ねても上にあがれず、力を使い果たしてすっかり弱り、口もきかず、ただお腹をふくらまして井戸の中から空を見あげるばかりでした。    

            薛天智故事選                                     1995・9・1 

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