隣の軒の籠はかまうな
世間では『門の雪は払っても隣の屋根の霜は知らんふり』と言うが、わしの話は『門の雪は払っても隣の軒の籠はかまうな』と言う話だ。
悪者に恨まれた家があった。その悪者が人を殺し頭を切って籠にいれ、この家の軒に吊るしておいた、罪をなすりつけようとしたのだ。こうしておけば、役人が首のない死体を見つけ必ず首を捜す、首がここから見つかり、この家は絶対に申し開きできず捕まる。
悪者は真夜中に籠をこの家の軒に吊るした、やがて雪が降ってきたが、この家では悪者が軒に籠を吊るしたとは知らない。
さて、この家の隣に欲張りが住んでいた、この欲張りが朝早く起きてみると雪だ、早速家の前の雪を払い、疲れた腰を伸ばして見ると、隣の家の軒に籠が下がってる“隣には何時も籠など下がっていない、豚でも割いたのかな”と思い、欲張りは塀を越えて隣の軒の籠をはずして見ると、籠の中に血が滴る人間の頭がはいっている、これは人殺しの大事件だと、また元の軒に下げておいた。
空が明るくなった。この家でも起きて外に出ると雪だ、すぐ門の前の雪をかいて、上を見ると軒に何かが、かかっている、籠だと下ろして見ると中に人の首、驚いて役所に届けた。
やがて役人が来てこの家を見ると、門内の雪は払ってなく、行ったり来りの足跡がある、調べると足跡は隣の家に続いている、役人は八分通りこの籠は隣の家から持って来たものだと判断した。
裁判官は隣の欲張りに「お前は人を殺して、なぜその首を他人の家の軒につるしたのだ」と質した、隣の欲張りはしょうがなくて本当のことを話した。「はい、隣の軒に肉が下げてあるなではないかと思い、盗んで食べようとしたのです、人間の首だとは思いもしませんでした」と盗みを認めた。
しかし、裁判所はそれを認めず、この殺人事件の犯人は隣の欲張りだとされ、斬首と判決された。しばらくして本当の犯人がわかり、欲張りは釈放され刑を免れた。
それで『門の雪を払っても隣の軒の籠はかまうな』と言う言葉が残されたのだ。
李占春故事選 1995・8・17