姿かたちじゃ分からない
昔、劉という長者に二人の娘がいた。上の娘の婚家は張、婿は張挙、資産家であった。
下の娘の婚家は王、婿は王元、貧しい家であった。王元は痩せて小さいが詩を吟じ、文章を書き読書に励んでいる、王元の妻は夫の読書を一日中糸を紡ぎ、つましい暮らしで支えた。
ある年、劉長者は六十の誕生日を迎えた。資産家に嫁いだ上の娘は夫と晴れ着を着て輿に乗り、祝い桃、祝いうどん、名酒を持って、劉長者の誕生を祝いに来た。劉長者は上の娘が婿と来たのを見ると、急いで家の外まで迎えに出て娘と婿を家の中に通し、召使に娘の婿に煙草を出し、お茶をつがせ、ご機嫌を伺って厚くもてなした。
下の娘の婚家は貧しくて輿を雇うことができず、娘夫婦は歩いて祝いに来た、貧しくて祝いの品も買えなかったが、心をこめた手作りの祝い桃と祝いうどん、それに大きな饅頭を蒸して持って来た。けれども、劉長者は下の娘と婿が粗末な衣服で田舎臭いのを見ると、座ったまま動こうともしない。そのうえ下の娘夫婦を雇い人の部屋に行かせ、かまいもしなかった。
下の娘は心の中で、私たちが来ても、お父さんは声もかけてくれない、姉さんも義兄さんも私たちをさけている、これは私たちを馬鹿にしているのだと、怒った声で夫に「馬鹿にするならするがいいわ、母屋にも入れないなんて。あんた、私たちこんなにまで恥じをかかされていることないわ、もう、家に帰りましょう」と言った。
王元は妻に「せっかく来たのだから、お義父さんにお祝いのご挨拶だけでもして行こう」と言い、妻を連れて、劉長者に祝いの挨拶をしに母屋に行くと、劉長者は「わしはお前たちには十年会いたくない、早く帰ってくれ」と言った。
これで王元は義父が本当に自分を軽蔑しているのだと分かり、振り向きもしないで外に出てしまった。
諺に「人を姿で判断するな、海の水は量れない」と言う。王元はもともと志も強く、才能もあるので、劉長者の家から帰ったあと、ひそかに志を果たそうと心に決め、昼も晩も読書に励んだ。妻も外に出て働き、自分を投げ打って王元の読書を助けた。
夫婦は暮らしを切り詰めて努力し三年もしないうちに都の科挙を受け、一度で状元に合格した。
吉報は千里を走る。王元が状元に合格したことは、たちまち風のように伝わり、劉長者の耳にも入った。劉長者は下の娘の婿が状元に合格すれば、高官になり、わしもあやかれるかもしれない、それなのにどうしてわしは何時も下の娘の婿を軽んじてしまったのだ、あのわしの誕生日の時には娘夫婦を追い払ってさえしまった。これは下の娘の所に行っておかねばなるまいと早速訪ねることにした。
翌日、朝早く鶏が鳴くと劉長者はすぐ出発し、半日歩きやっと下の娘の家に着いた。門を入ると娘夫婦が家にいるので、慌てて「娘、婿さん、いたかね、わしはお前さんたちに会いたくてやって来たよ」と言った。娘は「お父さん、忘れたの、まだ十年まで六年あるわよ、お父さんは私たちに十年会いたくないと言っていたじゃない」と言うと、劉長者は口をあいたまま何も言えず、頭をかかえこんでしまった。
姜淑珍故事選 1995・8・9