煙草の由来

 ずっと昔、それはそれは比べようもないほど仲のいい夫婦が幸せに暮らしていた。亭主が仕事から帰ると女房は遠くまで迎えに出る、女房は飯を作り、亭主は稼いで来る。二人の愛情はこの上もなくよかったがまだ子供はなかった。好い事は長く続かないものだ、何年かたって女房は急病に罹り死んでしまった。

 妻が死んだあと、男は再婚してもまたこうなるかも知れないと、再婚はしないことに決めた。男は妻の亡骸を自分の土地に埋め、墓の土をならして雑草を残らず抜き綺麗にした、それからは墓の上に小さな草を見つけては手でこまめに抜いていた。畑仕事がない時や淋しい時は墓のそばで横になって時を過ごし、夜、寝つけなかったりすると、ちょっと墓まで行き、それからまた戻って寝た。こうしてたちまち二、三年が過ぎた。

 ある年の春、雪がとけると、妻の墓のてっぺんに一本の草が生えていた。この草はほかの草と違い、茎が太く、葉っぱも大きかった、男はなんとなくこの草が好きになり、周りの雑草を鍬ですいてこの草だけを残し、何時も肥やしをやったり、水をかけたりして育てると、何か月かして花が咲き種をつけた。
 男は茎の下の方の黄ばんだ葉を払い、その葉を燃やし妻の墓を綺麗にしようとすると、燃やした黄ばんだ葉が思いがけぬいい香りをだすので、男は火で乾いた葉を揉み砕き、まだ湿っている葉で巻き、火をつけて煙りを口から吸い、鼻から吐き出すとなんとも言えぬいい香りと味がして、少し酒を飲んで酔ったようになり、墓の上に横になって寝ると、とても気持ちよく眠れた。
 男はこれはいい楽しみだと、気がふさぐとこれを吸って休み、眠ればいいと考え、葉をみんな摘みとり、種はとって置いた。

 こうして、男は死んだ妻のことを思い出す度にこれを巻いて吸うとよく眠むれた。そこで仕事で疲れた時もこの葉を巻いて吸うと疲れがとれるようになった。男は吸う葉がなくなると、いつもふさぎこんでしまった。翌年の春なるとすぐ、とって置いた種を妻の墓の周りに蒔き、葉や種が沢山とれると、村の人たちにも分けてやった。これがだんだん伝わり、煙りを吸うのでこれを煙りとよび、やがて人々はこの草も煙草と言うようになった。 

            李占春故事選                                  1995・7・5

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