冰凌花(福寿草)

  山々に春がくればまだ氷や雪があっても、点々と星のように咲きだす小さな黄色の花を人は冰凌花という。これにはこんな話が伝えられている。昔、皮をなめし、靴や鞭、皮のものなら何でも作る職人がいた。妻が男の子一人残して先に死んだ。職人は食べるにも着るにも困りはしなかったが子どもをかかえての独り暮らしは不便で、後添えを貰った。後妻は初めは先妻の子の面倒をみていたが自分の子が生まれると、先妻の子にはろくな食事も暖かい着物も与えず、骨の折れる仕事をさせ、一日中、叩いたり罵ったりするようになった。

 父親の職人は村や町を巡り、あちこちの家で靴や鞭を作り、馬の鞍、馬の口なわを修理して歩き回っているから何時も家にいないことが多かったかったが、ある日、職人が久し振りに家に帰り、鞭の芯にする木を干しに山へ行くと、息子が寒さにふるえながら柴を刈っていた、厚そうなものをしっかり着ているのにどうして寒さにふるえているのだろうと、綿の袷をみると中は芦の花であった。父親は「芦の花の袷を着せるのは鞭で打つのと同じではないか」と言って、家に戻るとすぐ後妻を離縁した。 

 後妻は実家に帰ったが、村人たちが「あの女は後妻に入って先妻の子を苛めたのだ」と言っているのを聞き、父も母も兄夫婦も冷たくあたった。おまけに自分の子まで「兄さんをあんなに苛めた母親はいらない」と言う始末であった。後妻は生きる力を失って、ある大雪の降る日に山の木に首を吊って自殺した。

 後妻の霊魂が宙に迷っていると天界の楊二郎神に出会った、楊二郎神が「霊魂になって何を迷っているのだ」と聞くと、後妻の霊魂はことのあらましを話した、楊二郎神は「それはお前が悪いが、何かよいことをすれば迷いは解ける」と言った、「どうすればいいでしょう」「まだ冷たい早春に咲く花に変わって人々を喜ばせたらどうだ、そうすれば人々はお前をさげすむこともないだろう」「それならわたしは花に変わります」

 楊二郎神は鞭をふり後妻の霊魂を山の頂上に上げた。やがて雪や氷がとけようとする時、後妻の霊魂は冷たい風に開く花に変わった。それは先妻の子にした後妻の氷のような心と狼のような酷い仕打ちをやわらげるかのような黄色い可憐な花であったが、それでも人々はこの花を冰凌花とか冰郎(狼)花とかと呼んだ。  

 中国民間文学集成遼寧巻撫順市巻上             

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