大酒飲み
老父はしまりや、息子は大酒飲みという父と子がいた。
ある日、息子はまたあびるほど飲んでは吐いた。
老父は
『ほんのり酔った粋な姿は人も羨むものよ、
嘘だと言うなら市場へ行ってみろ、
人は姿恰好できまるもの』
と詩を詠んで息子を諫めた。
息子は俺の金で飲む酒だ、人が何と言おうとかまうもんかいと思い、
『酒あれば、絹の衣裳なぞいるものか、
死んだら誰がそれを着るのか』
と一首ひねりだした。息子の気持ちは飲み食いできばそれでいいというのだ。
老父はこれを聞いて、怒りだし「よし、お前は酒が命だというのだな、それなら着物を脱いで酒瓶に漬かれ」と言った。家長が言えばそれで決まりだ、老父は本当に息子を酒瓶の中に入れ上を石臼で押さえた。心の中で息子の酒癖がこうして酒漬けのあとでなおるかと思ったのである。
息子の女房は亭主が酒瓶に入れられるの見て、心を痛め、老父を恨んでみたが亭主を助けることもできず、一日ボ−としていた。亭主が瓶の中でどうしているか心配で、万一大変なことになったら、どうしょうと思うのだが、老父は何も言わないし、ほかに助けを求めるわけにもいかない。ただ酒瓶の周りをウロウロし中の亭主を励ました。
そのうち酒瓶の上の石臼に封印がしてあるのを見て女房は泣き出し、泣きながら
『義父は夫を諫め夫は聞かない、
夫は酒瓶にいれられ、夫婦が会うのは、
ただはかない夢の中』
と詩を一句詠んだ。
ところが亭主は酒瓶の中でまだ飲み足りない、女房の泣くのを聞いて亭主も一句
『女房よ泣くな、石臼の封切るな、
もしもお前が夫恋しというのなら、
夫の俺に酒のつまみを持って来い』
と詠んで、石臼の穴から手を出した。
それを見て女房はこんなになってもまだ女房のわたしより酒が恋しいのかと怒り出したとさ。
李占春故事選 1995・6・7